川崎市幸区はマンション1,413件、戸建て553件。マンション成約の半分以上が築20年以内にある区
川崎市幸区で実際に成約した取引を、国土交通省の不動産情報ライブラリで集計しました。いちばん多いのは中古マンションで1,413件です。
戸建ては553件で、マンションの半分に届きません。土地だけの取引は93件で、三つのうち最少です。
マンションの中央値は5,000万円です。㎡単価の中央値は80万円です。戸建ての中央値は5,000万円で、安いほうから4分の1の値は4,100万円、高いほうから4分の1の値は6,300万円です。
幸区のマンションで目を引くのは、築年帯ごとの成約数の偏りです。築10年以内と築11〜20年の二つの帯を足すと、マンション成約の半分を超えます。
築46年以上の帯は、件数でいえばごく一部です。幸区で売りに出て、買われているマンションの多くは、新しい側の帯にあります。
これは売る側にとって二つの意味があります。一つは、築20年以内の部屋なら、比べられる成約がたくさんあることです。同じ築年帯・同じ間取りの成約を集めやすいので、査定の根拠は作りやすい区です。
もう一つは、築30年を超えた部屋の持ち主は、区の中央値をそのまま目安にできないことです。5,000万円は新しい帯の成約に引っ張られた数字です。古い帯の部屋は、その帯の成約だけと比べてください。
マンション全般の準備と進め方は中古マンションを売るにまとめています。ここから先は、幸区のデータでしか言えないことを書きます。
幸区のマンションは築20年までほとんど下がらない。下がるのは築21〜30年の帯から先で、築31〜45年への段がいちばん深い
幸区のマンションを築年帯で並べると、形がはっきりしています。築11〜20年の帯の中央値は、築10年以内の帯を下回っていません。築20年までは、古くなっても値段が落ちていない区です。
値段が動き始めるのは築21〜30年の帯からです。そして築21〜30年から築31〜45年へ移るところで、中央値がいちばん大きく落ちます。築46年以上の帯では、築10年以内の半分以下になります。
つまり幸区のマンションの値段は、築20年まで平らで、そこから二段で下がります。一段目は築21〜30年に入るところ、二段目は築31〜45年に入るところです。
二段目のほうが深い。この形を知っていると、「築〇年だから下がる」という話がどこまで本当かを判別できます。
築25年の部屋を持っている人は、一段目の先にいて、二段目の手前にいます。この位置の部屋は、比べる成約を築21〜30年の帯に限らないと、査定が高くも低くも出ます。築10年以内の成約と比べた査定は高く出ますし、築31〜45年の成約と比べた査定は低く出ます。
建築士の視点
築20年まで値段が平らな区は、買い手が築年より別のものを見ている区です。幸区のマンションでは、買い手の多くが住宅ローンを組んで住む人だと考えられます。ローンを組む買い手は、月々の返済額と部屋の広さ・立地を見て決めます。築10年と築18年の差は、その判断の中では小さい。
築21〜30年に入ると、給水管や外壁の大規模修繕が一巡しているかどうかが問われます。築31〜45年に入ると、旧耐震かどうかの線が問われます。境目は1981年6月の建築確認です。あわせて修繕積立金の残高も、買い手の判断に入ってきます。二段目の段が深いのは、ここで買い手の不安が一気に増えるからです。
築30年を超えた部屋を売る人は、修繕履歴と長期修繕計画、積立金の残高を、査定の前にそろえてください。幸区では、この資料の有無で二段目の深さが変わります。
3LDKが成約の半分近くを占める。2LDKは3LDKと中央値が近いのに、値段の幅が広い
幸区のマンションで成約が最多の間取りは3LDKです。3LDKだけで、区のマンション成約の半分近くを占めます。
次に多いのが2LDKです。この二つで、成約の大半です。
3LDKと2LDKの中央値は、幸区では近い値です。ここだけ見ると「間取りで値段は変わらない」と読めますが、幅が違います。
2LDKは安いほうから4分の1の値から高いほうから4分の1の値までの幅が、3LDKより広い。同じ2LDKの中に、安い帯と高い帯の両方が入っています。
これは、幸区の2LDKが一種類ではないことを示しています。古い棟の2LDKと、新しい棟の2LDKが同じ集計に入っていると考えられます。
古い棟の2LDKは家族向けの部屋として売られ、新しい棟の2LDKは広さより設備と立地で売られる。値段の決まり方が違う二つの部屋が、同じ間取り名で並んでいます。
2LDKを売る人は、間取りをそろえるだけでは比べる成約が絞れません。築年帯を先にそろえてから、その中の2LDKと比べてください。
3LDKを売る人は、件数が多いので、築年帯と間取りの両方をそろえた成約が見つかります。幸区の3LDKは、査定の根拠をいちばん作りやすい部屋です。
改装済みの中央値は未改装より高い。ただし幸区では、改装の記載がある成約が全体の一部にとどまる
幸区のマンション成約のうち、改装の有無が記録されているものを見ます。改装済みの中央値は、未改装より高く出ています。改装済みの部屋のほうが高く売れている、という並びです。
ただし、この数字には二つの注意があります。一つは、改装の記載がある成約が、幸区のマンション成約全体の一部だということです。新しい帯の部屋には、改装の記載がないものが多い。
改装済みと未改装の比較は、主に古い側の帯の中で起きています。築20年以内の部屋を直すかどうかの判断には、この比較をそのまま使えません。
もう一つは、改装済みの中央値と未改装の中央値の差が、改装にかかった費用と同じではないことです。差のぶんだけ回収できる、とは読めません。直した部屋は、直す前の状態が悪かったから直したことが多く、その分が引かれたうえでの値段です。
幸区で売る前に直すか迷うなら、「現況のまま」と「直した場合」の二つの査定を並べてください。差が工事費を上回らなければ、直さずに売るほうが手元に残ります。直すかどうかの判断材料は売る前にリフォームすべきかに整理しています。
直近1年はマンションも戸建てもやや上がった。幸区では、上がった中身が二つで違う
直近1年の中央値を、その前の1年と比べました。幸区では、マンションも戸建ても、やや上がっています。向きは同じです。
ただし成約数の動きが違います。マンションは、直近1年の成約数が前の1年より減りました。
戸建ては増えました。マンションは「件数が減って値段が上がった」、戸建ては「件数が増えて値段も上がった」という年です。
この違いは、売り出すときの読み方に影響します。マンションの場合、件数が減って値段が上がった年は、売りに出る部屋が少なかった可能性があります。
出物が少なければ、買い手は限られた中から選びます。この状況は、売り手にとって有利に働くことがありますが、来年も続くかはデータからは分かりません。
戸建ての場合、件数も値段も増えた年は、買い手が増えたと読めます。ただし幸区の戸建ては築10年以内の成約が多く、新しく建った家が売られている割合が高い区です。
「上がった」の中に、新しい家の成約が多く入っている可能性があります。古い家を売る人は、上がった相場をそのまま自分の家に当てはめないでください。
戸建ては553件。築年の順に値段が並ばない区で、築31〜45年の帯が築11〜20年の帯より高い
ここから戸建ての話です。幸区の戸建て553件を築年帯で並べると、ふつうの区と違う形が出ます。
築10年以内の帯がいちばん件数が多く、戸建て成約の半分を超えます。ここまでは新しい家の多い区の形です。
問題はその先です。築31〜45年の帯の中央値が、築11〜20年の帯や築21〜30年の帯より高く出ています。
築年が進むほど安くなる、という並びになっていません。築46年以上の帯でも、築10年以内の帯と比べてあまり下がりません。
中央値がいちばん大きく落ちるのは、築31〜45年から築46年以上へ移るところです。つまり幸区の戸建ての値段は、築年の順ではなく、最後の一段だけで落ちる形です。
この形の理由は、データだけでは確定できません。ただ考えられることはあります。築30年を超えた家は、分譲の時期が古く、敷地が今の新築より広いことが多い。
新しい家は、一つの敷地を分けて建てた小さな区画が多い。幸区では、建物の古さより敷地の広さが値段を決めていると考えると、この並びに説明がつきます。
築30年を超えた戸建てを持っている人は、「古いから安い」と自分で決めないでください。幸区では、その家の値段を決めているのは敷地です。敷地の面積・間口・前面道路の幅を先に伝えて、築年帯の近い成約ではなく敷地条件の近い成約と比べてもらってください。
戸建ての中央値が最高なのは第2種住居地域、最低は準工業地域。ただし成約の半分近くは第1種住居地域で売れている
幸区の戸建てを用途地域で分けると、中央値がいちばん高いのは第2種住居地域です。いちばん低いのは準工業地域です。そして成約がいちばん多いのは、どちらでもない第1種住居地域で、戸建て成約の半分近くがここで売れています。
用途地域は、その土地に何を建てていいかを都市計画法で決めた区分です。第1種住居地域と第2種住居地域は、どちらも住宅が中心で、店舗や事務所の規模に差があります。準工業地域は、環境を悪化させるおそれのない工場が建てられる地域です。
幸区で第2種住居地域の中央値が高いのは、その用途地域の場所に理由があると考えられます。第2種住居地域は、幹線道路沿いや駅に近い場所に指定されることが多い。そこに建つ戸建ては、敷地の値段が高いので、建物の古さにかかわらず高く出ます。
準工業地域が低いのは、隣に工場が建ちうることを買い手が気にするからです。ただし幸区の準工業地域の戸建ては件数が少なく、周囲がすでに住宅でそろっている区画もあります。
準工業地域に建つ家を売る人は、周囲の現況を査定で伝えてください。用途地域の名前だけで値段を決めた査定は、その家の周りを見ていません。
建築士の視点
用途地域は、市区町村の都市計画図で確かめられます。川崎市の場合、都市計画情報はインターネットで公開されています。自分の家の用途地域を知らない人は多いので、査定の前に確認しておいてください。
第1種住居地域で売る人は、比べる成約が多いので根拠を作りやすい。第2種住居地域で売る人は、同じ用途地域の成約と比べた査定かを確かめてください。第1種住居地域の中央値と比べられると、低く出ます。
前面道路の幅で中央値は三つに分かれる。ただし幸区では、4m未満の帯が最下位ではない
戸建ての値段を分ける条件として、前面道路の幅があります。幸区の戸建てを4m未満・4〜6m・6m以上の三つに分けると、中央値に差が出ます。
ここで幸区に特有の並びが出ます。6m以上の帯がいちばん高いのは、想像のとおりです。ただし4m未満の帯の中央値が、4〜6mの帯を下回っていません。
ふつうは4m未満がいちばん安く出ます。幸区ではそうなっていません。
理由として考えられるのは、4m未満の道路に面する家の場所です。幅4m未満の道路は、古くからの住宅地に多い。幸区でそうした場所は駅に近い市街地に集まっていると考えられ、敷地の値段が高い。
道路が狭いことで引かれる分を、場所の値段が上回っている、という読み方です。ただし4m未満の帯は件数が少ないので、この並びは少ない成約で決まっています。
もう一つ、間口の幅も見ておきます。幸区の戸建ては、間口10m以上の帯の中央値が、ほかの帯から離れて高く出ています。間口が広い家は、幸区では敷地そのものが広い家で、値段が建物ではなく敷地で決まっている、という先ほどの話とつながります。
前面道路が4m未満の家を売る人は、建て替え時の後退義務を確認してください。道路の中心から2mまで下がる決まりです(建築基準法第42条2項)。後退が済んでいるか、済んでいないなら後退後の敷地面積はいくつか。
幸区では4m未満が最下位ではないぶん、この点を確かめずに値段を下げられたら、反論の材料があります。道路と間口が値段に影響する仕組みは間口と前面道路で売却価格はどれだけ変わるかにまとめています。
土地だけの成約は93件で最少。幸区では、古家を壊す前に「壊さない値段」を先に取る
幸区で土地だけで売れた取引は93件で、マンション・戸建て・土地の三つの中でいちばん少ない。土地の㎡単価の中央値は53万円です。
この数字の使い道は、古い戸建てを壊すかどうかの判断です。53万円に自分の敷地面積を掛けると、更地にした場合のおおまかな値段が出ます。そこから解体費を引いた数字が、壊して売った場合に手元に残る目安です。
幸区では、この計算を「壊す前提」で始めないでください。先に書いたとおり、幸区の戸建ては築46年以上でも中央値があまり下がらない区です。
築31〜45年の帯は、築11〜20年の帯より高い。古家付きのまま売った値段が、更地にして解体費を引いた値段を上回ることが、幸区ではふつうに起こります。
順番は、先に古家付きのままの査定を取る。次に53万円×面積から解体の見積もりを引いた数字を作る。
二つを並べて高いほうを選ぶ。壊してから査定を取ると、壊さない選択肢が消えます。
土地だけの成約が少ない区では、53万円そのものも少ない件数で決まっています。自分の敷地と面積・形・道路幅が近い成約があるかを、担当者に聞いてください。更地と古家付きの判断は更地で売るか、古家付き土地のまま売るかに整理しています。
幸区で査定を頼むときに確かめること。マンションは「築20年の線のどちら側か」、戸建ては「築年より敷地」
ここまでの幸区のデータを、査定を頼むときの確認事項にまとめます。
マンションを売る人は、査定額がどの築年帯の成約と比べた金額かを聞いてください。幸区のマンションは築20年まで平らで、その先で二段に下がります。築20年以内の部屋なら、同じ帯の成約は多いので、根拠は出せるはずです。
築21〜30年の部屋は、その帯の成約だけと比べた金額か。築31年以上の部屋は、修繕履歴と積立金の残高を先に出して、二段目の深さを小さくする。
間取りは、3LDKなら件数が多いので問題ありません。2LDKは、築年帯をそろえた上での2LDKと比べてください。
戸建てを売る人は、築年を先に言わないでください。先に言うのは、敷地面積・間口・前面道路の幅・用途地域です。幸区の戸建ては、築年の順に値段が並んでいない区です。
築年から入った査定は、築30年超の家を低く見ます。敷地から入った査定は、その家の値段を決めているものを見ています。
複数社に頼んだとき、金額の差が出たら、差の理由を聞いてください。「比べた成約の築年帯が違う」「用途地域の扱いが違う」「道路幅の見方が違う」。
理由が説明できる差なら、どちらの根拠が自分の家に近いかで選べます。理由が説明できない差は、高いほうを選ぶ理由になりません。
査定額の根拠の聞き方は不動産査定の仕組みにまとめています。幸区の査定で確かめることは、この記事に書いた順番で足ります。