川崎市中原区はマンション2,477件、戸建て674件。マンションの成約が戸建ての3倍を超える区では、査定の良し悪しは「どの成約と比べたか」で決まる
川崎市中原区で実際に成約した取引を、国土交通省の不動産情報ライブラリのデータで読みます。中古マンションの成約は2,477件で、中央値は5,500万円です。面積あたりの単価は、中央値で100万円/平方メートルです。
戸建ては674件で、中央値は6,200万円です。成約の半分が入る幅は4,800万円から7,500万円です。土地だけの成約は188件で、三つの中でいちばん少ない区です。
マンションの成約は戸建ての3倍を超えます。中原区で家を売る人の多くは、マンションを売る人です。
この記事も、マンションの話から始めます。戸建てと土地は後ろにまとめました。
成約が多い区には、成約が少ない区とは別の落とし穴があります。比べる相手が足りないのではなく、比べる相手が多すぎます。築年帯も間取りも改装の有無も違う部屋を一つの中央値にまとめると、自分の部屋の値段から離れます。
中原区の査定で見るのは、金額そのものより「どの成約を選び、どの成約を外したか」です。この記事は、中原区のデータで値段が分かれている線を順に示します。
中原区のマンションは築30年の線で値段が段になる。築46年以上は築10年以内の半分を割り、線の手前と先では比べる成約を分ける
中原区の中古マンションを築年の帯で並べると、値段がいちばん大きく落ちるのは一か所です。築21〜30年の帯から、築31〜45年の帯へ移るところです。築46年以上の帯まで進むと、中央値は築10年以内の帯の半分を割ります。
この形が意味するのは、築30年の線の手前と先で、買い手が別の人になっているということです。線の手前では、築年の差は値段の差として小さく出ます。線を越えると、同じ間取り・同じ広さでも、比べる成約の帯が変わります。
売る側が使えるのは、自分の部屋がどちら側にいるかです。築25年の部屋なら、築21〜30年の帯の成約で比べます。築35年の部屋の成約が根拠に混ざっていれば、査定は低く出ます。
逆に、築35年の部屋を築21〜30年の帯の成約で査定されると、売り出してから値段が動かなくなります。線の手前の部屋は高すぎる根拠を、線の先の部屋は低すぎる根拠を、それぞれ疑ってください。
建築士の視点
築30年の線が深くなる理由は、建物の中身が二つ変わるからです。一つは耐震の基準です。1981年6月の建築確認から新しい耐震基準になりました。築31〜45年の帯は、この線をまたぎます。旧耐震かどうかは、住宅ローンの審査と保険料に出ます。買い手が値段を下げて見る理由として、いちばん重いものです。
もう一つは修繕です。外壁と屋上防水の大規模修繕が一巡し、二回目が視野に入る時期です。給水管や排水管の更新も重なってきます。積立金が足りているか、一時金の徴収が決まっていないかを、買い手は管理組合の資料で見ます。
築30年を越えた部屋を売る人は、査定の前に資料をそろえてください。建築確認の日付、修繕の履歴、長期修繕計画、積立金の残高の四つです。中原区は築31〜45年の帯の成約も多いので、この資料がある部屋とない部屋の差が、値段に出ます。
マンションを売るときの準備で、戸建てと違う点は 中古マンションを売る にまとめています。
3LDKが最多で2LDKが次。成約が2,477件ある中原区では、間取り・築年帯・改装の三つをそろえても比べる相手が残る
中原区のマンションで、いちばん多く売れている間取りは3LDKです。次が2LDKです。この二つで、成約の大きな部分を占めます。
成約が少ない区では、間取りをそろえると比べる相手が消えます。だから築年帯を広げたり、隣の区まで見たりします。中原区は違います。
3LDKに絞り、築年帯を一つに絞り、改装の有無まで分けても、比べる成約が残ります。この区で「似た成約がないので広めに取りました」という説明が出てきたら、絞り方を聞き直してください。絞れる区で絞らない査定は、根拠が薄くなります。
3LDKと2LDKでは、買う人の暮らし方が違います。3LDKは家族向け、2LDKは少人数の世帯向けに使われることが多い間取りです。買い手が違えば、値段の付き方も違います。
2LDKを3LDKの単価で割り戻した査定や、その逆は、中原区では使わないほうが安全です。同じ間取りの成約だけで根拠を作れる区だからです。
改装済みの中央値は未改装より高い。中原区では「直してから売る」より「直した部屋と比べられているか」を確かめる
中原区では、改装済みと記載のあるマンションの中央値が、未改装より高く出ています。この数字だけを見ると、直してから売りたくなります。ここは二つに分けて考えてください。
一つは、売る前に直すかどうかです。改装済みが高いのは、買い手がそのまま住めるからです。直した費用がそのまま値段に乗る、という意味ではありません。
工事費と、直した場合の値上がり幅を並べて、差が出るときだけ直す。これが順番です。査定のときに「現状の金額」と「直した場合の金額」を両方聞けば、差は分かります。
もう一つは、未改装のまま売るときの査定です。中原区は改装済みの成約が多いので、未改装の部屋の査定に改装済みの成約が混ざりやすくなります。混ざると、査定は高く出ます。
売り出してから内見で「古い」と言われ、値引きの交渉になります。未改装の部屋は、未改装の成約で比べた査定かを確かめてください。高い査定を見てうれしい気持ちは分かりますが、中原区ではその査定の根拠を先に聞いたほうが、結果として手元に残ります。
売る前のリフォームをどう判断するかは、売る前にリフォームすべきか で実データから整理しています。
直近1年はマンションも戸建ても横ばい。中原区では、1年前の成約がまだ物差しとして使える年
直近1年の中央値は、前の1年と比べて、マンションも戸建てもほぼ横ばいでした。上がっていないので、待てば高くなる年ではありません。下がってもいないので、急いで売る年でもありません。
横ばいの年には、一つ使える点があります。1年前の成約が、まだ今の値段の物差しになることです。上がり続ける年は、1年前の成約で査定すると低く出ます。
下がり続ける年は、高く出ます。横ばいの年は、どちらのずれも小さい。
中原区は成約が多い区なので、同じ棟や同じ通りの成約を1年さかのぼって探せます。同じ棟の成約があれば、それが最も強い根拠です。
ただし、横ばいなのは区全体の中央値です。築30年の線を越えた部屋は、帯が変わった分だけ下がります。
「相場は横ばいなのに、うちの査定は去年より低い」という場合、原因は相場ではなく、自分の部屋が線を越えたことにあります。先に築年帯を確かめてください。
戸建ては674件。築46年以上でも築10年以内の7割が残り、段は築45年の線にある
ここからは戸建ての話です。中原区の戸建ての成約は674件で、中央値は6,200万円です。
築年の帯で並べると、マンションとは形が違います。築46年以上の帯の中央値は、築10年以内の帯より3割ほど低い水準です。つまり7割が残ります。
いちばん大きく落ちるのは、築31〜45年の帯から築46年以上の帯へ移るところです。マンションの線が築30年にあるのに対し、戸建ての線は築45年にあります。
この15年のずれは、値段を決めているものの違いから来ています。マンションの値段は建物の値段です。建物が古くなれば、値段も下がります。
戸建ての値段は、建物と敷地の合計です。中原区では、建物が古くなっても敷地の値段が残るので、7割の水準が保たれています。築46年以上で落ちるのは、建物の値段がほぼ消え、敷地だけの値段に近づくからです。
戸建てを売る人は、築年で自分の値段を決めないでください。築40年の家なら、まだ築31〜45年の帯にいます。
築46年以上の成約と比べた査定は低く出ます。逆に、築50年の家は築46年以上の帯の成約で比べた査定でないと、売り出してから動きません。
戸建ての中央値が最高なのは近隣商業地域、最低は準住居地域。成約が集まる第1種中高層住居専用地域は、用途地域の名前から値段を読みにくい区
中原区の戸建てを用途地域で分けると、中央値がいちばん高いのは近隣商業地域です。いちばん低いのは準住居地域です。成約がいちばん多いのは第1種中高層住居専用地域で、その中央値は最高と最低の間にあります。
用途地域は都市計画法で定められています。近隣商業地域は、近隣の住民に日用品を供給する商業の利便を増進するための地域です。
準住居地域は、道路の沿道としての業務の利便を図りつつ、住居の環境を保護する地域です。第1種中高層住居専用地域は、中高層住宅の良好な住居環境を保護する地域です。
近隣商業地域の戸建てが高いのは、敷地の使い道が広いからです。住宅だけでなく、店舗や事務所を建てられます。買い手が住む人に限られないので、敷地の値段が上がります。
準住居地域が低いのは、幹線道路沿いの用途を想定した地域だからです。住まいとして買う人の評価が分かれます。
中原区で注意したいのは、成約が集まる第1種中高層住居専用地域が中間にいることです。最も多い用途地域の成約が、区の中央値をほぼ作っています。近隣商業地域の家をこの中央値で査定すると低く出ます。
準住居地域の家をこの中央値で査定すると高く出て、売れません。自分の家の用途地域は、川崎市の都市計画情報で調べられます。査定の前に確かめてください。
用途地域と土地の形が値段にどう出るかは、土地の形と用途地域で、価格はどう変わるか にまとめています。
前面道路の幅で戸建ての中央値は三つに分かれる。中原区では4mの線と6mの線を、容積率の計算と一緒に伝える
中原区の戸建てを前面道路の幅で分けると、4m未満、4〜6m、6m以上の三つで中央値が違います。道路の幅は後から変えられません。だから査定の根拠として強く、買い手も必ず見ます。
建築士の視点
4mの線は、建築基準法で決まっています。建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。幅4m未満の道路に面した敷地は、建て替えのときに道路の中心から2mの位置まで下がります。下がった分は敷地として使えません。
6mの線は、容積率の計算から来ます。建築基準法では、前面道路の幅が12m未満のとき、住居系の用途地域では道路の幅に0.4を掛けた数が容積率の上限になります。中原区で成約が最も多い第1種中高層住居専用地域は、住居系です。道路が4mなら上限は160%、6mなら240%です。都市計画で定められた容積率がこれより大きい敷地では、道路の幅が建てられる大きさを決めます。
中原区の戸建てで道路幅の差が中央値に出るのは、この計算が買い手の側で働いているからです。査定を頼むときは、前面道路の幅と、道路の中心からの後退が済んでいるかを伝えてください。後退が済んでいない4m未満の家は、後退後の敷地面積で値段を見られます。後退が済んでいる家は、そのことを先に言わないと、済んでいない前提で値段を引かれます。
道路の幅と間口が値段にどう出るかは、間口と前面道路で売却価格はどれだけ変わるか で実データから示しています。
土地だけの成約は188件で最少。中原区の土地の値段は、68万円より戸建ての成約から逆に読む
中原区の土地だけの成約は188件です。マンションと戸建てに比べて、いちばん少ない区分です。単価の中央値は68万円/平方メートルです。
成約が少ない区分の中央値は、少ない数の取引で決まります。一つの大きな取引で動きます。中原区で土地の値段を読むときは、この中央値を一つの目安にとどめてください。
戸建ての成約から敷地の値段を逆に読むほうが、根拠になります。築46年以上の戸建ての値段は、建物がほぼ消えた敷地の値段に近い。その成約が、土地だけの成約より多くあります。
古い戸建てを持っていて、壊して更地で売るか迷っている人は、順番を守ってください。先に、そのままの状態での査定を取ります。次に、更地にした場合の査定を取り、解体費を引きます。
二つを並べてから決めます。中原区では築46年以上でも戸建ての値段が7割残るので、壊す前提で始めると、残っていた値段を自分で消すことがあります。
中原区で査定を頼むとき。マンションは「同じ棟の成約が何件あるか」、戸建ては「用途地域と道路幅をそろえた成約か」
ここまでの内容を、査定を頼むときの確かめ方にまとめます。売却の流れ、必要な書類、仲介手数料の計算は、どの区でも同じです。それぞれ別の記事で説明しているので、ここでは中原区で違ってくる点だけを書きます。
マンションを売る人が聞くことは三つです。一つ目は、同じ棟の成約が何件あり、その成約を根拠にしたかです。中原区は成約が多いので、同じ棟の成約が見つかる可能性があります。
二つ目は、比べた成約の築年帯が自分の部屋と同じかです。築30年の線の手前と先を混ぜた査定は、中原区ではずれます。
三つ目は、改装の有無をそろえたかです。改装済みの成約で未改装の部屋を査定すると、高く出て売れません。
戸建てを売る人が聞くことも三つです。一つ目は、用途地域をそろえた成約かです。第1種中高層住居専用地域の中央値で近隣商業地域の家を査定すると、低く出ます。
二つ目は、前面道路の幅をそろえたかです。4m未満、4〜6m、6m以上のどの帯の成約と比べたかで、値段は変わります。
三つ目は、築45年の線のどちら側の成約かです。築31〜45年の帯と築46年以上の帯を混ぜた査定は、根拠が薄くなります。
査定額が複数社で違うとき、高いほうを選びたくなります。中原区では、高い査定より根拠の絞り方が正しい査定を選んでください。成約が多い区では、根拠を絞った査定ほど、売り出した後の値段と近くなります。
査定額と売れる値段が違う理由は、不動産査定の仕組み で机上査定と訪問査定に分けて説明しています。