同じ広さの土地でも、用途地域が違うと成約価格の水準は変わります。全国の実データでは、準工業地域が3,000万円、第一種低層住居専用地域が2,700万円でした。
土地の形も値段に関わります。ただ、形の影響は数字の読み方に注意がいります。二級建築士の立場から、この差がどこから来るのかを整理します。
土地の形の影響は、全国の数字では読めない
国のデータには、土地の形の区分があります。長方形、ほぼ長方形、台形、不整形、袋地などです。
ところが、全国の市区町村をまとめて形ごとに並べると、袋地が一番高く出てしまいます。都市部ほど袋地が多いためです。形の影響ではなく、都市部の値段の高さが数字に出ています。
だから、この記事では形ごとの値段の比べは載せません。
なお、このサイトで扱う金額は、国のデータ区分「宅地(土地と建物)」の成約価格です。土地と建物を合わせた総額で、土地だけの値段ではありません。建物の築年数・広さ・構造の違いも、そのまま金額に含まれています。
形の影響を見たいなら、同じ地域の中で、面積が近い事例どうしを比べるしかありません。
建築士の視点
不整形地や旗竿地は、敷地の面積が同じでも、建物を配置できる範囲が狭くなります。用途地域ごとに上限が決まる建蔽率・容積率の数字を、そのまま使い切れないことが多いためです。道路に接する間口が狭い旗竿地では、駐車スペースの取り方や、隣地との距離による日照・採光の確保も難しくなります。設計の自由度が下がる分、買う側が想定する使い方の幅も狭まり、価格に反映されやすくなります。
自分の土地が長方形か不整形かは、法務局の公図や測量図で確認できます。境界確定測量図があれば、形と正確な面積の両方が分かります。境界確定測量の進め方は、土地を売るで扱っています。
形だけで価格は決めつけられない
同じ地域の中でも、不整形の土地が長方形より高く売れていることがあります。
この差だけで「不整形地のほうが高い」とは言えません。値段の差には、面積や築年、駅からの距離など、形以外の条件も含まれています。
件数が少ないと、なおさらです。広めの高額な区画がいくつか入るだけで、真ん中の値段が引っ張られます。
建築士の視点
形の悪さは、面積が広い土地では影響が小さくなることがあります。有効に建てられる範囲が多少削られても、必要な床面積を確保できる余地が残るためです。逆に、狭い敷地で形が悪いと、建てられる建物の規模そのものが制約されます。「不整形地は安い」と決めつけず、面積との組み合わせで見る姿勢が実務では必要です。
自分の土地の形と価格の関係を見るときは、同じ形の分類だけでなく、面積が近い事例と見比べる必要があります。地域ごとの実際の相場の確かめ方は、相場の調べ方で扱っています。
同じ市のなかでも、駅からの距離と土地の形で価格は変わります。まず自分の地域の実際の成約価格を見ます。
用途地域とは何か。建てられるものの上限を決める区分
用途地域は、住居・商業・工業など、市街地の土地利用の大枠を定める都市計画の区分です。国土交通省近畿地方整備局の説明によると、全部で13種類あり、指定されると建てられる建物の種類が決まります。
このうち第一種低層住居専用地域は「低層住宅のための地域」です。小規模な店舗や事務所を兼ねる住宅、小中学校などは建てられますが、規模の大きい建物は建てられません。近隣商業地域は「まわりの住民が日用品の買い物などをする地域」で、住宅や店舗のほかに小規模な工場も建てられます。
準工業地域は「主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域」です。環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんどの用途が建てられます。
建てられる用途の幅が広い地域ほど、店舗や事業用地としての需要が乗る余地が生まれます。第一種低層住居専用地域のように住環境を守るための地域は、建てられる規模そのものが抑えられています。
建蔽率(敷地に対してどれだけの面積で建てられるか)と容積率(延べ床面積をどれだけ積めるか)にも上限があります。これも用途地域ごとに、都市計画で指定されます。
値段もここで変わります。
用途地域は、その土地に建てられる建物の用途と大きさの上限を決める区分。住居専用の地域は静かに暮らせる一方で建てられる規模が小さく、商業系・工業系の地域は建てられる幅が広い。同じ広さの土地でも、区分が違えば評価も変わる。
全国の実データ|用途地域別の値段。近隣商業・準住居が高い
全国の戸建て(土地建物)を、用途地域ごとに見ます。このサイトは全国379市区町村の取引を集めています。市区町村ごとに用途地域別の真ん中の値段を出し、それをさらに並べたときの真ん中が次の数字です。
- 近隣商業地域:4,100万円
- 準住居地域:4,100万円
- 第2種住居地域:3,450万円
- 第2種中高層住居専用地域:3,200万円
- 第1種中高層住居専用地域:3,000万円
- 準工業地域:3,000万円
- 第1種住居地域:2,900万円
- 第1種低層住居専用地域:2,700万円
近隣商業地域と準住居地域が上に来ます。準工業地域も、第一種低層住居専用地域を上回っています。
この差も、用途地域だけの効果とは言い切れません。準工業地域や近隣商業地域は、幹線道路沿いなど利便性の高い立地に指定されていることが多い区分です。立地条件の違いが、価格に重なっている可能性があります。
用途地域ごとに、集計に入る市区町村の顔ぶれも違います。たとえば準住居地域は、取引のある市区町村が少なめです。並び順は目安です。
建築士の視点
準工業地域や近隣商業地域は、住宅だけでなく店舗や事務所、軽工業の用途としても使えるため、買う側の選択肢が広くなります。事業用地として検討する層が加わる分、需要の裾野が広がりやすい地域です。一方、第一種低層住居専用地域は、建てられる規模が抑えられている代わりに、静かな住環境が守られています。どちらが良い悪いではなく、何のために土地を使うかで評価の軸が変わります。
自分の土地の用途地域は、お住まいの市区町村で確認できます。都市計画の情報を地図で公開している自治体なら、住所を入力するか、地図上をクリックすると表示されます。地図が見当たらないときは、都市計画課の窓口で聞いてください。
市街化調整区域に入っている土地は、用途地域とは別の制約を受けます。全国の集計では、市街化調整区域の戸建ては1,500万円でした。詳しくは市街化調整区域の土地を売るで扱っています。
不整形地だと分かったあと、査定でこれを聞く
自分の土地が不整形だと分かっても、それだけでは打つ手が決まりません。査定を受けるときに、担当者へ次の3つを聞いてください。
1つ目は、査定の比較に使った成約事例です。どの事例と比べたのか、その土地の形と面積はいくつかを聞きます。
形の違う事例と比べているなら、その分の調整をどう入れたかも聞けます。ここが一番大事です。
2つ目は、形を理由に金額を下げたかどうかです。下げたのなら、その理由を言葉で説明してもらいます。「不整形なので安くなります」で終わる説明は、根拠として弱いです。
3つ目は、この土地に何が建てられると見ているかです。駐車場を何台取れるか、建物を何階建てで想定しているか。
買う側が気にするのはここです。ここを説明できる担当者は、土地を見たうえで査定しています。
同じ土地でも、査定額は会社によって差が出ます。差が出たときは、金額の高さではなく、理由を説明できるほうを基準にしてください。査定額の根拠の確かめ方は不動産査定の仕組みで扱っています。
なお、間口が狭い土地や旗竿地は、形の分類よりも前面道路と間口の影響が大きく出ることがあります。この点は間口と前面道路で売却価格はどれだけ変わるかで扱っています。
不整形な土地は、誰が買うかで値段が変わる
形が悪いと分かっても、売れないわけではありません。買う相手が変わるだけです。
相手を決めないまま値段だけ下げると、時間もお金も減ります。売り出す前に、次の順で当たり先を考えてください。
最初に検討するのは、隣の土地の所有者です。不整形な土地は、隣地と合わせると形が整うことがあります。隣の人にとっては、間口が広がる、駐車スペースが取れる、建て替えのときに使える範囲が増えるといった実利が出ます。
第三者より高く買う理由を持てる相手です。ただし相手に買う意思と資金がなければ話は進みません。
媒介契約を結ぶときに「隣地に打診してもらえるか」を聞いてください。やらない会社もあります。
次に、業者に売るか個人に売るかで見方が違います。建売業者は、決まった間取りの建物を並べられるかで土地を見ます。形が崩れていると手を出しにくくなります。
一方、注文住宅を建てたい個人は、設計で対応できる範囲なら受け入れることがあります。相手が見つかるまで時間はかかります。
ただし形を理由に値切られにくいのはこちらです。急いでいないなら、売り出し期間を長めに見る前提で組んでください。
古家が建っているなら、更地にするかどうかも先に決めます。間口が狭い土地や旗竿地は、重機を入れにくく、解体の手間が読みにくいことがあります。壊す前に聞くのが先です。
解体を決める前に、現地を見た業者から見積もりを取ってください。判断の順番は更地で売るか、古家付き土地のまま売るかで扱っています。
売る期限が決まっている場合は、買取も選択肢に入ります。仲介より価格は下がりますが、形を理由に断られにくく、引き渡しの日程が読めます。
決め手は、価格を取るか期間を取るかです。違いは仲介と買取の違いで整理しています。
用途地域が2つにまたがる土地は、どちらのルールで見るか
地図で自分の土地を確認すると、用途地域の境界線が敷地の中を通っていることがあります。幹線道路沿いに多い形です。
道路側が近隣商業地域、奥が第一種住居地域、といった分かれ方をします。この場合、どちらのルールで建てるのかが問題になります。
決め方は、用途と、建蔽率・容積率で分かれます。
建てられる用途は、敷地の過半を占めるほうの用途地域で決まります。そのルールが敷地全体にかかります。奥側が第一種低層住居専用地域で、そちらが過半なら、道路側の部分も含めて低層住居専用のルールで見ることになります。
建蔽率と容積率は、これとは違います。それぞれの部分の面積で按分して計算します。
かかっている面積の割合で足し合わせる形です。過半のほうの数字をそのまま敷地全体に当てはめると、実際と合いません。間違えやすい所です。
売るときに影響してくるのは、この違いです。買う側は「ここに何が建てられるか」で値段を見ます。またがっている土地は、地図の色を見ただけでは判断がつきません。
境界線が敷地のどこを通っているかを、市区町村の都市計画課で確認してください。境界線の位置は、窓口の図面で確認できます。
査定を頼むときは、その情報も渡してください。担当者が用途地域を1つだけ見て査定していると、建てられる規模の前提がずれます。査定前に揃えておく資料は土地の査定で必要な資料で扱っています。
用途地域別の値段を、表で並べて比べる
記事に出てきた用途地域ごとの値段を、建てられる用途と並べます。値段は、市区町村ごとの真ん中の値段を並べたときの真ん中です。
| 用途地域 | 全国の水準(戸建て) | 建てられる用途の幅 |
|---|
| 近隣商業地域 | 4,100万円 | 住宅・店舗のほか小規模な工場も可 |
| 準工業地域 | 3,000万円 | 環境悪化が大きい工場以外はほとんど可 |
| 第1種住居地域 | 2,900万円 | — |
| 第1種低層住居専用地域 | 2,700万円 | 低層住宅が中心。規模の大きい建物は不可 |
| 第2種住居地域 | 3,450万円 | — |
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(不動産取引価格情報)を家売却ラボが集計
全国の並びでは近隣商業地域が上で、第2種住居地域も高めに出ます。ただ、順番は地域で入れ替わります。
全国の数字は目安です。用途地域だけで高い安いは決めず、自分の市区町村の事例で確かめてください。
自分の家の条件を確かめる方法
自分の土地の形と用途地域は、査定を依頼する前に確認できます。
土地の形は、法務局で取得できる公図や地積測量図で確認します。公図は位置と形のおおよそを示す図面です。正確な境界は確定測量図でないと分かりません。
証明書はオンライン請求もでき、10分程度の手続きで郵送か窓口受け取りを選べます。査定に必要な資料の全体像は、土地の査定で必要な資料で確認できます。
用途地域は、お住まいの市区町村のホームページか、都市計画課の窓口で確認できます。地図で公開している自治体なら、自分の土地をクリックすると、用途地域とあわせて建蔽率・容積率も表示されることがあります。
形と用途地域は、それぞれ単独で価格を決める要素ではありません。面積や立地と組み合わさって、査定の評価に反映されます。まず自分の土地がどの分類に入るかを確認したうえで査定を依頼すると、担当者の説明を理解しやすくなります。