港北区の成約はマンション3,044件、戸建て1,563件。件数が戸建ての2倍近い区では、相場の読み方をマンションから組み立てる
横浜市港北区で成約した取引を、国土交通省の不動産情報ライブラリで集計しました。中古マンションが3,044件、戸建てが1,563件です。土地だけの成約は365件で、三つの区分の中でいちばん少ない数です。
マンションの件数が戸建ての2倍近くあります。港北区の「相場」と呼ばれるものは、その大半がマンションの成約でできています。
マンションの中央値は4,000万円です。㎡あたりに直すと65万円になります。
戸建ての中央値は5,800万円で、中央の半分は4,600万円から7,100万円の間に入ります。土地の㎡単価の中央値は39万円です。
件数が多い区分ほど、中央値は信用できる数字になります。港北区ではマンションがそれにあたります。
戸建ては件数がマンションの半分ほどなので、中央値の一つの数字より、中央の半分の幅のほうを見てください。4,600万円と7,100万円の開きが、戸建ての値段がどれだけ条件で動くかを示しています。
この記事は、港北区の成約データで目立っている点を順に読んでいきます。前半はマンションの築年帯・間取り・改装の差です。
後半は戸建ての築年帯・用途地域・前面道路の幅です。最後に土地と、売るときの費用をまとめます。
築20年台で売るか、築30年を越えてから売るか。港北区のマンションで中央値がいちばん動く境目
港北区の中古マンションを築年帯で分けると、中央値は築10年以内がいちばん高く、築46年以上がいちばん低くなります。築46年以上の中央値は、築10年以内の半分を切ります。
下がり方は一定ではありません。いちばん大きく落ちるのは、築21〜30年の帯から築31〜45年の帯へ移るところです。築30年が、港北区のマンションの値段の境目になっています。
なぜそこで落ちるのかは、成約データには書いてありません。ただ、買い手がこの帯で確かめる資料は決まっています。長期修繕計画の残り、修繕積立金の残高、大規模修繕の回数と次の予定です。
築30年を越えた棟では、この資料の中身で部屋の値段が変わります。同じ帯でも、積立金が足りている棟と、一時金の徴収が決まっている棟では、買い手の見方が違います。
築46年以上の帯はもう一つ事情があります。今から46年前は1980年で、1981年6月の耐震基準の改正より前に建った建物です。住宅ローン控除には、1982年以降の建築か耐震基準への適合という要件があります(租税特別措置法第41条)。
買い手がローン控除を使えない部屋は、買い手の側の資金計画が変わります。半分を切る中央値には、この要件が関わっています。
売る側ができることは、自分の部屋がどの帯で比べられるかを先に知ることです。築30年に近い部屋なら、査定のときに築21〜30年の成約と築31〜45年の成約を分けて出してもらってください。二つの帯の差が、そのまま「今売るか、あとで売るか」を考える材料になります。
3LDKが最多、2LDKが続く。比べられる部屋が多い港北区では、査定の根拠を「どの成約と比べたか」まで聞ける
港北区のマンションの成約で、いちばん多い間取りは3LDKです。次が2LDKです。3,044件の成約の中に、この二つの間取りが厚く入っています。
成約が多い間取りには、売る側にとって良い面があります。同じ間取り・近い広さ・同じ築年帯の成約が、すぐに見つかることです。査定額が区の中央値4,000万円と離れていても、比べた成約を並べれば理由が分かります。
逆に言えば、港北区の3LDKで「区の相場はこのくらい」とだけ言われた査定は、根拠が足りません。比べられる成約があるのに使っていないからです。
査定を受けたら、どの成約と比べたかを聞いてください。築年帯・広さ・階数・改装の有無が自分の部屋と近い成約が出てくれば、その査定は信用できます。
2LDKは3LDKと買い手の層が違います。部屋数が少ないぶん、駅からの距離や専有面積の使い方を細かく見られます。
同じ棟の3LDKの成約を、㎡単価に直して2LDKに当てはめるだけでは足りません。2LDKは2LDKの成約と比べてもらってください。
マンションを売るときに戸建てと違ってそろえる資料は、中古マンションを売る にまとめています。港北区の場合は、そこに「築30年の帯のどちら側か」を書き添えると、査定の話が早くなります。
改装済みの中央値は未改装より上。築30年の段差が大きい港北区では、改装でその段差を埋められるかを先に聞く
港北区の中古マンションは、改装済みの成約の中央値が、未改装より高くなっています。これは成約データの事実です。
ただし「改装費をそのまま上乗せして売れる」という意味ではありません。改装しても、築年の帯は変わりません。
築35年の部屋を改装しても、比べられる成約は築31〜45年の帯のままです。港北区のマンションは築30年の段差が大きいので、改装で上の帯の値段に戻ると考えないほうが安全です。
改装の効き目があるとすれば、同じ帯の中での位置です。同じ築年帯・同じ間取りの成約の中で、改装済みの部屋が上のほうに並ぶ。その差が、改装費を下回るか上回るかが判断の分かれ目です。
港北区で直す前にやることは一つです。改装しない前提の査定と、改装した場合の査定を、別々に出してもらうことです。
その差額と工事の見積もりを並べれば、直すかどうかは自分で決められます。改装済みの中央値が高いというデータは、工事を勧める材料ではなく、この二つの査定を取る理由として使ってください。
リフォームして売るかどうかの考え方は、売る前にリフォームすべきか で実成約データをもとに整理しています。
直近1年はマンションも戸建てもやや上。両方が上がった区で、査定額が「上がった分」を先取りしていないか確かめる
港北区の直近1年の中央値は、中古マンションが前の1年よりやや上がりました。戸建てもやや上がっています。二つの区分がそろって上がった区です。
この数字の読み方には注意がいります。中央値は、その1年に成約した物件の真ん中の値段です。
新しい物件が多く売れた年は、同じ部屋の値段が動いていなくても中央値は上がります。「やや上」は、区の物件がすべて値上がりしたという意味ではありません。
上がった区で起きやすいのが、査定額の先取りです。直近の高い成約だけを比べて、さらに「まだ上がる」という見込みを足した査定が出ることがあります。
査定額は売り出しの値段であって、売れた値段ではありません。高い査定を出した会社に頼んで、売れずに値下げを重ねると、結果は最初から適正な値段で出した場合より低くなることがあります。
査定を比べるときは、比べた成約の時期を聞いてください。直近1年の成約だけか、その前の年も入っているか。そのうえで、売り出してから何か月で決めたいかを伝えると、査定額の意味がそろいます。
査定額と売却額がなぜ違うのかは、査定額と売却額は違う で整理しています。
戸建ては築46年以上でも築10年以内から3割ほどの下げ。港北区の戸建ての値段は、建物より敷地の条件で動く
港北区の戸建てを築年帯で分けると、築46年以上の中央値は築10年以内より3割ほど低い位置にあります。マンションが半分を切るのと比べると、戸建ての下げは浅い区です。
戸建てがいちばん大きく落ちるのは、築31〜45年の帯から築46年以上の帯へ移るところです。マンションの境目が築30年なのに対して、戸建ての境目は築45年のあとにあります。同じ港北区でも、二つの区分で値段が動く年数が違います。
築46年以上の戸建ては、1981年6月の耐震基準の改正より前の建物です。この帯の買い手は、建物に値段をつけていないことが多くなります。
建て替えるか、大きく直すかを前提に、土地の値段として買います。それでも中央値が3割ほどしか下がらないのは、土地の値段が残っているからです。
つまり港北区の戸建ては、築年が進むほど「敷地の条件」で値段が決まる市場です。用途地域、前面道路の幅、間口、敷地の形。
これらは建物と違って直せません。査定で先に伝える資料は、建物の設備より、この敷地の資料です。
このあとの二つの節で、港北区の成約データで差が出ている敷地の条件を見ていきます。
港北区の戸建ては近隣商業地域の中央値がいちばん低い。店や事務所が建てられる土地が、住まいとしては安く成約している
港北区の戸建ての成約を用途地域で分けると、いちばん多いのは第1種低層住居専用地域です。中央値がいちばん高いのも、第1種低層住居専用地域です。いちばん低いのは近隣商業地域です。
第1種低層住居専用地域は、低層住宅の住環境を守るために定める地域です(都市計画法第9条)。近隣商業地域は、近隣の住民向けの日用品の供給など、商業の利便を増進するための地域です(同条)。住まい専用の地域と、店や事務所が混ざる地域です。
建築士の視点
第1種低層住居専用地域には、建物の高さの限度が10mまたは12mと決められています(建築基準法第55条)。隣の敷地にも同じ制限がかかるので、日当たりや眺めが将来も大きく変わりにくい。買い手はこの「変わりにくさ」に値段をつけます。港北区でこの地域の中央値がいちばん高いのは、制限が厳しいからではなく、制限が住環境を守っているからです。
近隣商業地域は逆です。隣に店舗や事務所、中高層の建物が建つことがあります。住まいとして買う人は、その可能性を値段から引きます。一方で、建て替えて店舗兼用にしたい人や、土地として使いたい人には条件が合います。買い手の層が二つに分かれるぶん、住まいとしての成約だけを集めると中央値は低く出ます。
自分の家がどの用途地域にあるかは、横浜市の都市計画情報で住所から調べられます。購入時の重要事項説明書にも書いてあります。近隣商業地域の家なら、住まいとして売るか、土地として売るかで、比べる成約が変わります。査定では両方の見方で出してもらってください。
用途地域の中央値は、その地域で成約した家の敷地の広さや道路条件をまとめた結果です。自分の家の値段ではありません。査定額を土地の㎡単価に直して、区の土地の中央値39万円と並べると、地域の平均から自分の家がどれだけ離れているかが分かります。
土地の形と用途地域の効き方は、土地の形と用途地域で、価格はどう変わるか で実データで整理しています。
前面道路は4m未満・4〜6m・6m以上で中央値が変わる。港北区で4m未満なら、道路の種類を役所で確かめてから査定に出す
港北区の戸建ての成約を前面道路の幅で分けると、4m未満・4〜6m・6m以上の三つの帯で中央値に差が出ています。道路の幅は、港北区の戸建ての値段を分けている条件の一つです。
理由は建築基準法にあります。建物の敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法第43条)。前面道路が4m未満で、その道路が同法第42条第2項の道路にあたる場合を考えます。
建て替えのときに、道路の中心線から2mの位置まで敷地を下げる必要があります。下げた分は敷地として使えません。買い手はこの「使えなくなる面積」を値段から引きます。
ここで大事なのは、4m未満の道路がすべて同じではないことです。第42条第2項の道路なら後退すれば建て替えられます。
しかし、建築基準法上の道路にあたらない通路に面している場合、そのままでは建て替えができません。同じ「4m未満」でも、買い手の見方はまったく違います。
だから港北区で前面道路が4m未満なら、査定に出す前に道路の種類を確かめてください。横浜市の建築指導の窓口で、道路が建築基準法のどの条文にあたるかを調べられます。
道路の幅は、建築確認の配置図や重要事項説明書に書いてあります。すでに後退済みかどうかも、ここで分かります。
道路の種類を先に伝えると、査定の根拠がそろいます。あとから分かると、値引きの材料になります。後退済みの家なら、それ自体が伝えるべき条件です。
6m以上の道路に面した家は、建て替えや駐車の条件が買い手に分かりやすい家です。築年が古くても、この条件は残ります。査定では道路の幅を、築年より先に伝えてください。
土地だけの成約は365件。港北区で更地の値段を読むときは、古い戸建ての成約を土地の値段として補う
港北区で土地だけの成約は365件です。マンションの3,044件、戸建ての1,563件と比べると、比べられる事例が少ない区分です。㎡単価の中央値は39万円です。
事例が足りないときは、築46年以上の戸建ての成約を土地の値段として読みます。前の節で見たとおり、港北区の築古の戸建ては建物にほとんど値段がついていません。
成約価格を敷地面積で割れば、土地の㎡単価に近い数字が出ます。用途地域と前面道路の幅が同じ事例を選ぶと、比べる精度が上がります。
古い家が建っている土地を売るとき、壊してから売るかどうかは先に決めないでください。港北区では築46年以上の戸建てでも中央値が残っています。建物付きのまま売れる可能性があるなら、解体費を先に出す理由がありません。
建物付きの査定と、更地にした場合の査定を並べ、解体の見積もりを取ってから決める。この順番なら、壊した分を回収できないまま売ることは避けられます。
更地にすると、固定資産税の住宅用地の特例が外れます(地方税法第349条の3の2)。1月1日時点で建物がないと、その年の税額が上がります。壊す時期を決めるときは、この日付も見てください。
港北区で売る順番と、かかるお金の全体像。手順の詳しい説明は別の記事に送る
港北区で売る順番は、相場を見る、査定を複数並べる、媒介契約を結ぶ、売り出す、契約する、引き渡す、の六つです。この記事で見てきた築年帯・間取り・用途地域・道路幅は、最初の二つで使います。自分の物件がどの成約と比べられるかを知ったうえで査定を頼むと、出てきた金額の根拠を自分で確かめられます。
査定を頼むとき、港北区で先に伝えるとよい項目をまとめます。マンションなら、間取りと専有面積、築年(とくに築30年の前か後か)、改装の有無、長期修繕計画と積立金の残高です。
戸建てなら、用途地域、前面道路の幅と道路の種類、間口、敷地面積です。築年帯・改装・用途地域・道路幅は、この記事で中央値の差が出ていた項目です。
かかるお金は、仲介手数料・印紙税・抵当権を抹消する登録免許税・譲渡所得税が中心です。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が決まっています(同法第46条)。
譲渡所得税は、自分が住んでいた家なら譲渡所得から3,000万円を引ける特別控除があります(租税特別措置法第35条)。ローンが残っている家は、売却代金で完済できるかを先に確かめます。
費用の一覧と、それぞれの計算のしかたは、不動産売却でかかる費用の一覧 にまとめています。港北区のデータで分かるのは値段の決まり方までです。手続きと費用は、そちらの記事で確かめてください。