中区の成約は2,351件がマンション。戸建て480件・土地140件とは、相場の読み方が違う
横浜市中区で2023年第2四半期から2026年第1四半期に成約した取引を集計しました。出典は国土交通省の不動産情報ライブラリです。
中古マンションが2,351件、戸建て(土地と建物のセット)が480件です。土地だけの取引は140件で、三つの中でいちばん少ない区分です。
中区で「相場」と呼べる数字は、マンションのものです。中央値は3,700万円、㎡あたりの単価は中央値82万円です。
件数が多いぶん、築年帯や間取りで細かく切っても成約が残ります。自分の部屋に近い条件で比べられるのが、この区の強みです。
戸建ての中央値は5,200万円です。安いほうから4分の1の値は3,600万円、高いほうから4分の1の値は8,000万円で、幅が広く開いています。戸建ては件数が少ないうえに、用途地域と道路幅で値段が割れます。
一つの中央値で自分の家を測ると、上にも下にも外れます。戸建てを売る人は、後ろの節の切り口で自分の位置を確かめてください。
1Kと3LDKが並ぶ中区のマンション。中央値3,700万円は、どちらの部屋の値段でもない
中区のマンション成約で、いちばん多い間取りは1Kです。次が3LDKです。
1Kと3LDKは、買う人も、買う理由も、値段の決まり方も違います。この二つが上位に並ぶ区では、区全体の中央値が「誰の部屋の値段でもない数字」になります。
1Kの買い手の多くは、自分で住むか、人に貸すかのどちらかです。貸す目的の買い手は、家賃から管理費と修繕積立金を引いた残りで、出せる値段を逆算します。部屋の向きや内装より、㎡単価と管理状態と駅までの距離が見られます。
3LDKの買い手は、家族で住む人が中心です。同じ棟の同じ間取りが過去にいくらで成約したか、近くの似た広さの部屋がいくらで売りに出ているか。
この「横並び」で値段が決まります。学校や買い物の便が問われるのも、この層です。
自分の部屋がどちらかで、査定で見るべき資料が変わります。1Kなら近くの同じ広さの家賃相場、3LDKなら同じ棟の過去の成約です。
中央値3,700万円から出発すると、1Kの人は高すぎる値段を、3LDKの人は安すぎる値段を目安にしてしまいます。マンションの準備全般は、中古マンションを売る にまとめています。
マンションの落ち幅がいちばん大きいのは築30年の線。築46年以上は旧耐震の帯に入り、半分以下になる
中区の中古マンションを築年帯で見ると、値段がいちばん落ちるのは築21〜30年から築31〜45年へ移るところです。築46年以上の中央値は、築10年以内の半分以下です。二つの線は別のものなので、分けて説明します。
築30年の線は、設備と修繕の節目です。築30年前後は、2回目の大規模修繕を迎える建物が多い時期です。修繕積立金が足りているか、値上げや一時金の予定があるかが、この帯から買い手に強く見られます。
給排水管の更新が済んでいるかも聞かれます。この帯を売るなら、長期修繕計画と直近の総会議事録を先に用意してください。
築46年以上の線は、法律の線です。築46年以上の建物は、1981年6月に施行された新耐震基準より前に建てられています。いわゆる旧耐震の帯です。
買い手が住宅ローン控除を使うには、1982年以降の建築か、耐震基準に適合する証明が要ります(租税特別措置法第41条)。控除が使えない物件は、買い手の資金計画が組みにくくなります。半分以下という落ち幅には、この条件が重なっています。
旧耐震の帯で売るときに効くのは、耐震診断を受けているか、改修をしたか、その記録が管理組合に残っているかです。記録があれば、買い手は証明の取得を検討できます。
なければ、現金で買う人か、建物より土地を見る買い手が相手になります。どちらの相手を想定して値付けするかを、査定の段階で決めてください。
改装済みは高く成約している。未改装で売るなら、比べる成約も未改装にそろえる
中区では、改装済みのマンションの中央値が、未改装より高く出ています。この数字は「改装すれば高く売れる」とは読めません。
改装した部屋は、売り主が費用をかけてでも売りたい物件です。改装の有無のほかに、築年帯や広さも未改装の部屋と同じとは限りません。
未改装のまま売る人にとって、大事なのは比較の相手です。査定書に改装済みの成約が混ざっていると、自分の部屋の値段が高く見えます。
売り出し価格を高く置き、内見で「古い」と言われて下げる流れになります。比べる成約を未改装にそろえてもらうだけで、この遠回りは避けられます。
改装して売るかどうかは、かけた費用が値段に乗るかではなく、買い手が決まる早さで考える話です。1Kは貸す目的の買い手が内装を自分で決めたがることがあり、改装が裏目に出る場合があります。3LDKは家族が内見で印象を決めるので、水回りの状態が効くことがあります。
どちらも、改装費と値段の差を査定で並べてから決めてください。費用と値段の関係は、売る前にリフォームすべきか で実データを使って整理しています。
マンションはこの1年ではっきり上がり、戸建てはやや上がった。3年分の中央値と直近の成約は分けて見る
直近1年の中古マンションの中央値は、その前の1年に比べてはっきり上がっています。戸建てもやや上がりました。上がり方はマンションのほうが大きい区です。
この記事に出てくる中央値3,700万円は、2023年第2四半期から2026年第1四半期までの全期間の数字です。直近の1年だけを切ると、中央値はこれより上に出やすくなります。
査定額が記事の数字より高くても、それだけで強気な査定とは言えません。逆に、記事の数字より低い査定は、古い成約を混ぜている可能性があります。
確かめ方は一つです。査定書の比較事例に、成約した時期が書いてあるかを見てください。時期が書いていなければ、書いてもらいます。
相場が動いている時期に、1年以上前の成約だけで値段を決めると、売り出し価格がずれます。上がっている区で売るときは、比較事例の「いつ」が値段の根拠そのものです。
戸建ては築31〜45年から築46年以上へ移るところでいちばん落ちる。築40年前後は「落ちる前」の帯にいる
中区の戸建てを築年帯で見ると、値段がいちばん落ちるのは築31〜45年から築46年以上へ移るところです。マンションの落ちる線(築30年)より、後ろにあります。築40年前後の戸建ては、まだ落ちる前の帯に入っています。
落ち幅も違います。築46年以上の戸建ての中央値は、築10年以内に比べて3割ほど下がるにとどまります。
マンションが半分以下になるのと比べると、戸建ての落ち方はゆるい区です。建物の値段が消えても、土地の値段が残るためです。
築40年前後で売るか迷っている人は、二つの数字を査定で出してもらってください。建物付きで売ったときの値段と、土地だけとして見たときの値段です。この差が建物に残っている値段です。
差が小さければ、急いで売る理由は築年数にはありません。差が大きければ、築46年の線を越える前に動く意味があります。
木造の戸建ては、築年数が進むほど建物の評価が減ります。ただし中区のデータでは、減り方は3割で止まっています。「古いから値段がつかない」と決めて安く手放す前に、土地の評価を確かめてください。
戸建ての成約は第1種低層住居専用地域に集まる。商業地域(いちばん高い)と第1種住居地域(いちばん低い)は、その外側にある
中区の戸建ての成約で、いちばん多い用途地域は第1種低層住居専用地域です。戸建ての中央値5,200万円の土台は、この地域の成約です。
一方、中央値がいちばん高いのは商業地域、いちばん低いのは第1種住居地域です。いちばん多い地域と、いちばん高い地域、いちばん低い地域が、三つとも別です。
第1種低層住居専用地域は、低い建物の住宅地を守る地域です。建物の高さは10mまたは12mのうち、都市計画で定めた限度を超えられません(建築基準法第55条)。背の高い建物が建たない代わりに、戸建てが並ぶ環境が保たれます。
買い手の多くは、同じように戸建てを建てて住む人です。土地の広さと形、日当たりが値段を決めます。
商業地域は、建ぺい率が80%と法律で決まっています(建築基準法第53条)。容積率の上限も高く設定されています。買い手は戸建てとしてではなく、そこに何が建てられるかで値段を見ます。
中央値が高いのは、土地の使い道が広いためです。古い戸建てでも、建物より土地に値段がつきます。
第1種住居地域は、住宅の環境を守りながら、店舗や事務所もある程度建てられる地域です。商業地域なら大きな建物が建てられ、低層住居専用地域なら住環境が守られる、という単純な話でもありません。中区ではこの地域の戸建ての中央値がいちばん低く出ています。
自分の家の用途地域は、横浜市の都市計画の図面で確かめられます。査定のときに、用途地域を先に伝えてください。第1種低層なら区の中央値が目安になります。
商業地域と第1種住居地域は、区の中央値から離れます。用途地域と値段の関係は、土地の形と用途地域で、価格はどう変わるか で扱っています。
前面道路の幅で戸建ての中央値が三つに分かれる。幅は接道義務だけでなく、容積率の上限にも効く
中区の戸建ては、前面道路の幅で中央値が分かれます。区分は4m未満、4〜6m、6m以上の三つです。
道路幅が値段に効く理由は、二つあります。一つ目は接道義務です。建物を建てる敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法第43条)。
4m未満の道路に面している場合、建て替えのときに道路の中心から2mまで敷地を後退させることがあります(同法第42条)。後退した部分には建物を建てられません。
二つ目は容積率です。前面道路の幅が12m未満の敷地では、都市計画で定めた容積率とは別に、道路幅に応じた上限がかかります。住居系の用途地域では道路幅に0.4を、それ以外では0.6を掛けた数字が上限です(建築基準法第52条)。
道路が狭いほど、建てられる床面積の上限が下がります。商業地域のように容積率の高い地域では、道路幅で使える容積率が大きく変わります。
中区で戸建てを売るなら、前面道路の幅と接している長さを、用途地域と一緒に伝えてください。道路の幅は道路台帳か、購入時の重要事項説明書に書いてあります。4m未満の場合は、すでに後退しているかどうかも調べておきます。
後から分かると値引きの材料になります。先に伝えれば、その前提で査定が出ます。
土地だけの成約は140件。築46年以上の戸建てでも中央値は3割減なので、壊す前に建物付きの値段を聞く
中区で土地だけの成約は140件で、三つの区分の中でいちばん少ない数字です。土地の㎡単価の中央値は32万円です。
古い戸建てを売るとき、先に壊して更地にする人がいます。中区のデータでは、この順番を急がないほうがよい理由があります。築46年以上の戸建てでも、中央値は築10年以内の3割減で止まっています。
建物付きのまま成約している家が、落ち幅の小さい値段で売れているということです。壊す費用を先に払うと、その分だけ手取りが減ります。
壊すかどうかは、建物付きの査定と土地だけの査定を並べてから決めます。建物付きの値段から解体費を引いた数字が、土地だけの値段を上回るなら、壊す理由はありません。下回るなら、更地のほうが買い手が広がります。
商業地域のように土地の使い道で値段が決まる場所では、建物がないほうが話が早いこともあります。判断の分かれ目は、更地で売るか、古家付き土地のまま売るか にまとめています。
土地だけで売る場合は、境界の確定が先になります。隣地との境界が確定していない土地は、買い手が決まっても引き渡しまでに時間がかかります。測量図が手元にあるかを確かめてから、査定を頼んでください。
査定書が届いたら確かめる三つの欄。比べた成約の築年帯・間取り・成約した時期
中区の査定は、査定額の大小より、根拠の欄で決まります。ここまでの節で出てきた条件を、査定書で順に確かめてください。
一つ目は築年帯です。マンションなら、比較事例が自分と同じ側にあるかを見ます。
築30年の線と築46年の線をまたいで比べていれば、その査定額は根拠が弱い数字です。戸建てなら、築46年の線をまたいでいないかを見ます。
二つ目は間取りと用途地域です。マンションは、1Kと3LDKを混ぜて比べていないか。自分と同じ間取りの成約で出しているか。
戸建ては、自分の用途地域と道路幅の条件に近い成約で出しているか。第1種低層の家を商業地域の成約と比べていれば、値段は合いません。
三つ目は成約した時期です。この1年でマンションははっきり上がっています。
比較事例が古いと、査定額は低めに出ます。時期が書いていなければ、書いてもらいます。
この三つがそろっている査定書は、値段の根拠を持っています。そろっていない査定書は、金額が高くても低くても、まだ値段とは呼べません。売却にかかるお金の全体は、不動産売却でかかる費用の一覧 で確かめられます。
査定は売るか決めていなくても受けられます。中区の成約データで自分の位置をつかんでから、複数の査定書を同じ三つの欄で比べてください。