東京都台東区で成約した不動産を種類ごとに数えると、中古マンションが突出しています。戸建てはその何分の一かで、土地はさらに少ない件数でした。
このページは、台東区の実成約に出ている特徴を、マンションから順に説明します。売る手順や費用のように台東区に限らない話は、解説記事へのリンクで代えます。
台東区で売りに出る家は、大半が中古マンション。3,438件の成約が物差しになる
国土交通省の不動産情報ライブラリで、台東区の成約を数えました。中古マンションが3,438件、戸建てが470件、土地が186件です。土地がいちばん少ない種類でした。
マンションの中央値は4,400万円で、面積あたりでは108万円/平方メートルです。戸建ての中央値は13,000万円、土地は140万円/平方メートルでした。
この偏りは、売る側に二つのことを教えます。一つは、マンションなら同じ条件の成約が見つかりやすいことです。築年帯・間取り・面積をそろえた成約を何件も並べ、その真ん中に自分の部屋を置けます。
もう一つは、戸建ての査定が一件ごとの個別事情に引っ張られやすいことです。成約が少ない種類では、条件の近い一件が混ざるかどうかで中央値が動きます。
直近1年、マンションは「やや上」、戸建ては「はっきり下」。件数の差が振れ幅の差になる
台東区の直近1年の成約を、その前の1年と比べました。中古マンションの中央値はやや上がり、戸建ての中央値ははっきり下がっています。同じ区、同じ期間で、向きも幅も違いました。
マンションの「やや」は、3,438件という件数の上に乗った動きです。件数が多いと、一件の高い成約や安い成約が混ざっても、中央値はほとんど動きません。やや上がったという結果は、区全体の水準が少し上に寄ったと読んで差し支えありません。
戸建ての「はっきり」には、別の読み方が要ります。470件を二つの1年に分けると、1年あたりの件数はさらに少なくなります。この規模の中央値は、価格の水準だけでなく、その年に売れた家の顔ぶれでも動きます。
築の浅い家が多く売れた年と、古い家が多く売れた年では、水準が同じでも中央値は変わります。「台東区の戸建てが安くなった」と言い切る前に、自分の家と条件の近い成約がどう動いたかを見てください。
売る側の実務に落とすと、査定書の根拠になっている成約の時期を確かめることになります。マンションなら、直近1年の成約を根拠にしてもらえば、やや上がった水準が反映されます。
戸建ては、直近1年の中から、築年帯と用途地域が合う成約を選んでもらいます。「いつの成約か」と「どの条件の成約か」の両方を聞くのが、台東区の戸建てでは欠かせません。
2LDKと1LDKが上位。面積が重なる二つの間取りは、部屋数より専有面積で成約をそろえる
台東区の中古マンションで、成約がいちばん多い間取りは2LDKです。二番目は1LDKでした。どちらもLDKに個室が付く形で、個室の数が一つ違います。
この二つは、専有面積が重なることがあります。個室を一つ多く取った2LDKと、LDKを広く取った1LDKが、同じくらいの広さで成約している場合です。
間取りの名前だけで成約を選ぶと、自分の部屋より広い2LDKや、狭い1LDKが根拠に混ざります。面積あたりの単価は広さで変わるため、間取りをそろえても面積がずれると、査定額もずれます。
比べる順番を決めておくと、この取り違えを避けられます。先に専有面積の近い成約を集め、その中から間取りと築年帯の合うものを残す順番です。
査定書に載っている根拠の成約について、間取りと面積の両方を見せてもらってください。面積が大きく違う成約しか無いなら、単価で換算した金額の根拠を聞き直します。
査定で聞かれるのは、部屋の広さと築年だけではありません。管理費と修繕積立金、大規模修繕の記録、同じ棟で売り出し中の部屋の有無です。そろえる書類は中古マンションを売るにまとめました。
値段の段差が来る築年が違う。マンションは築30年を越えてから、戸建ては築10年を越えてすぐ
台東区の成約を築年帯で分けて中央値を並べると、いちばん大きく下がる位置がマンションと戸建てで違います。
中古マンションは、築21〜30年から築31〜45年へ移るところで、中央値がいちばん大きく落ちます。築46年以上になると、築10年以内の半分を切りました。築30年を越えるまでは下げ方がゆるく、越えてから帯が変わる形です。
戸建ては形が逆です。築10年以内から築11〜20年へ移るところで、中央値がいちばん大きく下がります。
その先は下げ方がゆるくなり、築46年以上でも築10年以内からあまり下がっていません。新しい家の値段は築10年を越えると続かず、そこから先は長く横ばいに近い動きです。
この違いは、値段のうち建物が占める割合の違いです。マンションは敷地の持分が小さく、建物の価値が値段の多くを占めます。築30年を越えると、買い手は設備や配管の更新費用を見込んで値段を付けます。
戸建ては、建物より敷地が値段の多くを占めます。築10年を過ぎて建物の新しさが薄れると、残るのはほぼ敷地の値段です。敷地の値段は築年で下がらないため、古くなっても中央値が保たれます。
売る側にとっての意味は、築年帯ごとに変わります。築30年前後のマンションなら、今の査定書がどちらの帯の成約を根拠にしているかを確かめます。築46年以上のマンションは、築10年以内の成約と並べても根拠になりません。
同じ帯の成約の中で、管理と修繕の状態で位置が決まります。古い戸建てを持っているなら、「古いから値段がつかない」という前置きは台東区のデータと合いません。
建物ではなく、敷地の条件で査定してもらうのが筋です。敷地の条件は、後の節で書きます。
改装済みマンションの中央値は未改装より上。ただし改装で築年の帯は動かない
台東区の中古マンションを改装の有無で分けると、改装済みの中央値が未改装より高くなっています。この差を見て、売る前に改装すれば高く売れると考えるのは早い判断です。
差が出る理由は一つではありません。改装済みとして成約した部屋には、前の持ち主が住みながら直した部屋も、売るために直した部屋も含まれます。直した時期も内容も費用もばらばらです。
中央値の差は、改装費の平均を表していません。かけた費用がそのまま値段に乗るとは限らない、というのがこの数字の読み方です。
台東区で覚えておきたいのは、前の節で書いた築年の段差です。築31〜45年の部屋を改装しても、比べられる成約は築31〜45年の帯のままです。
水回りを新しくしても、築年の帯をまたいで上の帯の値段にはなりません。改装の効果は、同じ帯の中で上寄りに付くかどうか、までです。
改装に出す費用と、改装で上がる査定額を並べてから決めます。見積もりを取り、現況のままの査定額と、改装した場合の査定額の両方を聞きます。
上がる額が見積もりに届かないなら、現況で売って値段で調整するほうが手元に残ります。判断の材料は売る前にリフォームすべきかにまとめてあります。
台東区の戸建ては、築年より敷地の条件で値段が決まる。見るのは用途地域と前面道路
台東区の戸建ての中央値は13,000万円です。成約を値段順に並べたとき、中ほどの半分が収まる幅は6,800万円から31,000万円までです。
この幅の中で自分の家がどこに入るかを決めるのは、前の節で見たとおり、築年ではありません。築46年以上でも中央値があまり下がらない区では、値段の大半を敷地が占めます。
敷地の値段を動かす条件として、台東区の成約から読めるものが二つあります。用途地域と前面道路の幅です。どちらも売り主が後から変えられない条件です。
そしてどちらも、その敷地にどれだけの建物が建てられるかを決めています。次の二つの節で、順に見ます。
戸建ての成約が集まるのは商業地域。中央値も商業地域が上で、近隣商業地域が下
台東区の戸建てを用途地域で分けると、成約がいちばん多いのは商業地域です。中央値がいちばん高いのも商業地域で、いちばん低いのは近隣商業地域でした。上と下のどちらも商業系の用途地域で、住居系ではありません。
同じ商業系なのに差が出る理由は、建てられる上限にあります。都市計画法では、商業地域は商業などの業務の利便を増進する区域です。近隣商業地域は、近隣の住民への日用品の供給を主な内容とする区域です。
建築基準法は、それぞれに容積率の範囲を決めています。商業地域は200%から1300%、近隣商業地域は100%から500%の範囲で、都市計画が数値を指定します。商業地域のほうが上限を高く取れる分、同じ広さの敷地でも建てられる床面積が大きくなります。
買い手がこの敷地を何に使うかを考えると、差の出方が見えます。住むための家を建てる買い手は、上限の高さをそれほど使いません。店舗や共同住宅を建てる買い手は、容積率の上限をそのまま床面積に換えます。
商業地域の戸建ての成約には、後者の買い手が付けた値段が混ざると考えられます。近隣商業地域は上限が低いぶん、その値段が付きにくくなります。
売る側がやることは、自分の敷地の用途地域と指定容積率を確かめることです。区の都市計画の担当窓口で調べられます。
査定のときは、用途地域の名前と容積率を先に伝えます。商業地域の戸建てで、住宅用の成約だけを根拠にした査定額なら、低く出ている可能性があります。
前面道路の幅で戸建ての中央値が三段に分かれる。商業地域では道路の幅が容積率の上限を決める
台東区の戸建てを前面道路の幅で分けると、6m以上・4〜6m・4m未満の三つの区分で中央値に差が出ています。道路が広い敷地は高く、狭い敷地は低い向きです。
前面道路の幅が値段に効く理由は、台東区では二つ重なります。一つは、どの地域でも同じ接道の決まりです。建築基準法では、建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。
4m未満の道路に面した敷地は、建て替えのときに道路の中心線から2mの位置まで下がる必要があります。下がった分だけ、使える敷地が減ります。
もう一つは、商業系の用途地域で強く効く決まりです。建築基準法では、前面道路の幅が12m未満の敷地の容積率は、道路の幅に一定の数値を掛けた値が上限になります。商業地域や近隣商業地域では、幅(m)に0.6を掛けた値です。
道路が4mなら240%、6mなら360%が上限です。都市計画で指定された容積率がそれより高くても、この値までしか使えません。前の節で書いた商業地域の上限の高さは、前面道路が狭いと使い切れません。
台東区で戸建ての中央値が道路幅で三段に分かれる背景には、この掛け算があります。同じ商業地域、同じ広さの敷地でも、前面道路が4mか6mかで建てられる床面積が変わります。買い手はその差を値段に換えます。
売る側がやることは、前面道路の幅を数字で押さえることです。道路の幅は、法務局の公図と地積測量図、購入時の重要事項説明書で確かめられます。4m未満なら、過去に後退済みかどうかも調べます。
道路に接している長さが2mに満たない場合は、建て替えができない敷地として売り方が変わります。その場合の進め方は再建築不可物件を売るに書きました。
土地の成約は186件で最少。古い戸建てを壊すかどうかは、敷地としての査定を見てから決める
台東区の土地の成約は186件で、三つの種類の中でいちばん少ない数です。中央値は140万円/平方メートルでした。件数が少ないため、土地だけの成約から自分の敷地の値段を読むのは難しいところです。
台東区では、築46年以上の戸建ての中央値があまり下がっていません。つまり古い戸建ての成約は、ほぼ敷地の値段で取引されています。
土地の値段を知りたいときは、土地の成約に加えて、古い戸建ての成約も材料になります。築年帯が古く、用途地域と前面道路の幅が合う成約を選べば、186件より多くの手がかりが得られます。
古い戸建てを解体して更地にするかどうかは、二つの査定額を並べてから決めます。解体費を先に払っても、その分が値段に乗るとは限りません。
古家付きのまま敷地として査定を取り、更地にした場合の査定額と比べます。見極め方は更地で売るか、古家付き土地のまま売るかに書いてあります。
台東区の査定額には、四つの条件がそろった成約が根拠にあるか
売る手順と費用は、台東区でも変わりません。査定から引き渡しまでの流れは家を売る流れは7ステップにあります。ここでは、台東区のデータを踏まえて、査定額の根拠に求めたい四つの条件を挙げます。
一つ目は、成約の時期です。直近1年は、マンションがやや上、戸建てがはっきり下でした。根拠が2年前の成約なら、今の水準とずれます。
二つ目は、築年帯です。マンションは築30年を越えたところ、戸建ては築10年を越えたところに段差があります。自分の家と帯の違う成約は、根拠になりません。
三つ目は、マンションなら専有面積と間取りです。2LDKと1LDKは面積が重なるため、両方をそろえた成約を見せてもらいます。
四つ目は、戸建てなら用途地域と前面道路の幅です。商業地域か近隣商業地域か、道路が4m未満か4〜6mか6m以上か。この二つがそろわない成約は、敷地の値段が違います。
四つがそろった成約が根拠に無いなら、査定額はどこかの平均から逆算した数字です。その場合は、どの条件をゆるめて選んだのかを聞き、自分の家に近い側に補正してもらってください。複数の会社に同じ質問をすると、根拠を示せる担当者が分かります。