東京都豊島区の実成約を、国土交通省のデータで数えました。中古マンションが3,212件、戸建てが807件です。マンションが戸建ての4倍近くあります。
しかも、マンションでいちばん多い間取りは1Kです。住む家としてだけでなく、貸す部屋としても売り買いされている区だと読めます。
このページは、その特徴から順に書きます。売る手順や費用の一般論は、それぞれの解説記事に送ります。
豊島区の中古マンションの成約は、戸建ての4倍近い。比べる材料が多い側から読む
豊島区で成約した中古マンションは3,212件で、中央値は4,000万円です。面積あたりでは110万円/平方メートルでした。戸建ては807件で中央値8,500万円、土地は270件で三つの中でいちばん少ない数です。
件数が多いことは、売る側にとって一つの利点です。同じ築年帯、同じ間取り、近い広さの成約を何件も並べて、自分の部屋の位置を決められます。逆に言えば、豊島区のマンションの査定で「比べる成約が無い」と言われたら、探し方を疑ってよい件数です。
ただし3,212件を一つの中央値にまとめると、中身が見えなくなります。豊島区のデータで目立つのは、間取りの偏りと築年帯の段差です。この二つを先に分けないと、中央値4,000万円は自分の部屋の値段になりません。
管理費や修繕積立金、管理組合の書類のそろえ方は中古マンションを売るに書いてあります。ここでは豊島区のデータに出ていることだけを扱います。
最多の間取りは1K。貸したまま売るか、空けて売るかで、比べる成約が変わる
豊島区の中古マンションで、成約がいちばん多い間取りは1Kです。次が2LDKでした。広さも使い方も違う二つが、件数の上位に並んでいます。
1Kは、自分で住む人だけでなく、貸す目的で持つ人が多い間取りです。入居者がいるまま所有者だけが替わる売り方があり、豊島区の1Kの成約にはこの形も含まれています。
このとき買い手が見るのは、部屋の内装より今の家賃です。家賃から利回りを計算して、出せる値段を決めます。
同じ1Kでも、空室にしてから売ると買い手の顔ぶれが変わります。自分で住む人が加わり、内装や日当たりが値段に入ります。どちらが高くなるかは家賃の水準しだいで、決まった答えはありません。
売る側ができるのは、入居者がいる状態と空室の状態、二つの査定を取って並べることです。賃貸借契約は買い手に引き継がれるので、入居者に退去を求める必要はありません。
2LDKは、自分で住む人が買い手の中心です。1Kの成約を根拠に2LDKの単価を出すと、面積あたりの単価が高く出て、実態より上の値段が付きます。査定書に、自分と違う間取りの成約が混ざっていないかを見てください。
マンションの中央値がいちばん落ちるのは築31〜45年へ移る段。築46年以上は築10年以内の半分を切る
豊島区の中古マンションを築年帯で並べます。中央値がいちばん大きく下がるのは、築21〜30年から築31〜45年へ移るところです。そして築46年以上の中央値は、築10年以内の半分を下回ります。
築31年を越える段で落ちる背景には、買い手の資金の事情があります。住宅ローンの審査では、建物の残りの寿命を見られます。築年が進むほど借りられる期間が短くなり、月々の返済が増え、買い手の予算が下がります。
この影響が築30年前後から数字に出ていると読めます。あわせて、築30年前後は2回目の大規模修繕の時期に重なることが多い帯です。修繕積立金の残高や一時金の有無が、買い手の判断に入ってきます。
築46年以上の部屋は、建物全体の状態で値段が決まる度合いが強くなります。管理組合が修繕計画を更新しているか、積立金が足りているか、建て替えの話が出ているか。
部屋の中をきれいにしても、この部分は動きません。築46年以上の部屋を売るなら、管理組合の総会議事録と長期修繕計画を先に読み、買い手に聞かれる前に答えを用意しておきます。
築21〜30年の部屋を持っている人は、今の査定書がどの帯の成約を根拠にしているかを確かめてください。数年で次の帯に入ると、比べる相手が変わります。
直近1年の中央値は、マンションも戸建ても上がった。このページの中央値は、その上向きを含めた期間全体の数字
豊島区の直近1年の中央値は、中古マンションも戸建ても、前の1年よりはっきり上がりました。同じ区で両方が同じ向きに動いています。
ここで注意したいのは、このページに出ている中央値の性質です。4,000万円や8,500万円は集計期間全体の数字で、直近1年の成約だけを取り出した数字ではありません。
相場が上がっているときは、期間全体の中央値は直近の水準より低めに出ます。だから、この中央値をそのまま売り出し価格の上限と考える必要はありません。
一方で、上向きを理由に売り出し価格を高く置くのも危険です。上がったのは成約の中央値で、どの部屋も上がったわけではありません。使い方としては、比べる成約の期間を縮めることです。
査定書の根拠が2年前の成約なら、直近1年の成約で引き直してもらいます。それで出た幅の中で値段を決めれば、上向きを取り込みつつ、根拠のない上乗せを避けられます。
改装済みの中央値は高い。ただし1Kの「改装」と2LDKの「改装」は、買い手が見る場所が違う
豊島区の中古マンションでは、改装済みの成約の中央値が未改装より高く出ています。ただし、改装費をそのまま上乗せできるとは限りません。改装済みの部屋は築年や立地が違う別の部屋であって、同じ部屋を改装前後で比べた数字ではないからです。
豊島区で考えておきたいのは、間取りによって改装の意味が変わる点です。1Kは貸す目的の買い手が多く、見られるのは設備が貸せる状態かどうかです。家賃が上がらない改装は、利回りの計算に入りません。
2LDKは自分で住む人が買うので、水回りや床の状態を内見で見られます。直した場所が値段に反映されやすいのは、こちらです。
売る前に直すかどうかは、改装の見積もりと、現況のままの査定額、改装後の査定額の三つで決めます。査定額の差が見積もりを下回るなら、現況のまま売って値段で調整するほうが手元に残ります。判断の材料は売る前にリフォームすべきかに書いてあります。
戸建ての段差は築46年以上へ移るところ。ここで買い手が「住む人」から「建てる人」へ入れ替わる
ここからは戸建てです。豊島区の戸建ては807件で、中央値は8,500万円です。
成約の真ん中の半分は6,300万円から15,000万円の間に入ります。この幅が広いのは、建物の価値より敷地の条件で値段が決まる家が多いからです。
築年帯で見ると、戸建ての中央値がいちばん大きく下がるのは、築31〜45年から築46年以上へ移るところです。マンションより一段後ろに段差があります。
それでも築46年以上の中央値は、築10年以内より3割ほど低い程度です。マンションが半分を切るのと比べると、戸建ての下げ幅は小さいといえます。
築31〜45年までの戸建ては、まだ住む家として買われています。買い手は自分で住むつもりで内見に来て、建物の状態と敷地を両方見ます。築46年以上になると、買い手の中心が変わります。
今の建物を壊して建て直す人、あるいは建てて売る業者です。この買い手は建物を見ません。見るのは、敷地にどれだけの家を建てられるかです。
だから築46年以上の戸建てを売るときは、建物の説明より敷地の説明を先に整えます。前面道路の幅、接している長さ、用途地域、建蔽率と容積率。
この四つがそろっていれば、建てる側の買い手は自分で値段を出せます。建物より先に確かめる点は戸建てを売るにまとめました。
第1種中高層住居専用地域の戸建ては、比べる成約に困らない。商業地域の戸建ては、家ではなく容積率が値段になる
豊島区の戸建ての成約がいちばん多い用途地域は、第1種中高層住居専用地域です。そして、用途地域ごとの中央値がいちばん低いのも、この地域でした。いちばん高いのは商業地域です。
第1種中高層住居専用地域は、都市計画法で中高層の住宅のための環境を守ると定められた地域です。建てられる建物の用途が住宅中心に限られ、容積率の上限も商業地域より低く設定されます。ここにある戸建ては、住む家として売り買いされます。
成約が多いので、比べる相手には困りません。築年、広さ、前面道路の幅をそろえた成約を複数並べて、自分の家の位置を決められます。
商業地域は、都市計画法で商業の利便を増進する地域と定められ、容積率の上限が高く設定されます。同じ広さの敷地でも、建てられる延べ面積が大きいため、敷地としての値段が上がります。
商業地域の戸建ての中央値が高いのは、家が立派だからではありません。敷地に建てられる量が多いからです。
このことは、区全体の中央値8,500万円の読み方に影響します。この数字には商業地域の成約が含まれています。
第1種中高層住居専用地域の家を持っている人が8,500万円を自分の家の目安にすると、上に外れます。査定書の根拠にしている成約が、自分の家と同じ用途地域かを確かめてください。
前面道路が4〜6mの戸建てと6m以上の戸建ての差は、建て替えで建てられる延べ面積の上限から来る
豊島区の戸建ては、前面道路の幅を4m未満、4〜6m、6m以上の三つに分けると、それぞれで中央値に差が出ています。幅が広いほど高い並びです。
4m未満と4〜6mの差は、建て替えのときに敷地を下げるかどうかです。建築基準法では、建物を建てる敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。幅4m未満の道路に接している場合、建て替えのときに道路の中心線から2m下がった位置まで敷地を後退させる必要が出ます。
後退した部分には建物を建てられません。買い手は、建て替え後の家が小さくなる分を値段から引きます。
4〜6mと6m以上の差は、もう一つ別の決まりから来ています。建築基準法では、前面道路の幅が12m未満の敷地に容積率の上限がもう一つ付きます。住居系の用途地域なら、道路の幅に10分の4を掛けた値です。
幅4mなら160パーセント、幅6mなら240パーセントです。都市計画で決まった容積率と、この値の小さいほうが使われます。豊島区の戸建ては第1種中高層住居専用地域の成約が多いので、この計算が効く家が多いと読めます。
同じ用途地域にあっても、前面道路が4mの家と6mの家では、建て替えで建てられる延べ面積が違います。この差が、買い手の値段に入っています。
売る側は、前面道路の幅を数字で伝えます。幅は道路台帳か、購入時の重要事項説明書で確かめられます。4m未満なら、過去に後退済みかどうかも調べておきます。
土地の成約は270件で最少。小さい敷地は、単価より総額で買い手が決まる
豊島区の土地の成約は270件で、三つの種類の中でいちばん少ない数です。面積あたりの中央値は92万円/平方メートルでした。
この単価を自分の敷地の面積に掛けても、売れる値段にはなりません。理由は二つあります。一つは件数が少なく、道路の幅や用途地域がそろった成約から出た数字ではないことです。
もう一つは、小さい敷地では買い手が単価ではなく総額で探していることです。自分で建てる人は、土地と建物を合わせた予算の上限があります。
建てる業者は、建てて売ったときの売値から逆算します。どちらも「平方メートルあたりいくら」では考えていません。
土地を売る人が先にやることは、境界を確かめることです。隣地との境界が確定していない土地は、買い手が値段を付ける前に測量の話になります。古い家が建っている土地なら、壊してから売るか、建物付きのまま売るかを急いで決めないでください。
築46年以上の戸建てと土地は、豊島区では同じ買い手が見ています。古い家付きのまま敷地として査定を取り、解体費を差し引いた金額と比べてから決めれば十分です。
豊島区の査定を受けるとき、マンションは「賃貸中かどうか」、戸建ては「道路の幅」を先に伝える
売る手順そのものは、豊島区でも変わりません。査定から引き渡しまでの流れは家を売る流れは7ステップにあります。
かかるお金は不動産売却でかかる費用の一覧に書きました。ここでは、豊島区のデータから見て、査定の最初に伝えておくと話が早い点だけを挙げます。
マンションなら、入居者がいるかどうかを最初に伝えます。豊島区は1Kの成約がいちばん多く、賃貸中の部屋と空室の部屋では買い手も根拠になる成約も違います。
次に築年を伝え、築21〜30年の帯か、築31〜45年の帯かを査定書で確かめます。改装済みかどうかも伝えますが、改装費がそのまま上乗せされる前提で話を進めないようにします。
戸建てなら、前面道路の幅を最初に伝えます。4m未満、4〜6m、6m以上のどれかで、豊島区の中央値は分かれています。次に用途地域です。
第1種中高層住居専用地域なら、区全体の中央値8,500万円より低めに出ることがあります。それ自体は間違いではありません。築46年以上なら、建物の説明は短くして、敷地の条件を四つそろえます。
どちらの場合も、直近1年の成約を根拠にしてもらいます。豊島区はマンションも戸建ても前の1年より上がっているので、古い成約を根拠にした査定書は低めに出ます。査定額の根拠がどの成約かを聞くことが、豊島区で値段を確かめる近道です。