東京都墨田区で家を売る人が最初につまずくのは、「区の相場」という一つの数字を自分の家に当てはめてしまうことです。墨田区の成約データは、中古マンションに大きく偏っています。そのマンションの中身も、1Kと3LDKという、広さの違う二つの間取りに割れています。
区の中央値は、この二つが混ざった数字です。このページでは、墨田区の実成約で目立つ事実を、売る人が使う順に並べました。手順や書類のように、どの地域でも変わらない話は、それぞれの案内ページに任せています。
墨田区の成約は、中古マンションが戸建ての4倍を超える
国土交通省の不動産情報ライブラリで、墨田区の成約を種類ごとに数えました。中古マンションが3,673件、戸建てが795件です。土地は238件で、三つの中でいちばん少ない種類です。
マンションは戸建ての4倍を超えます。墨田区で「家を売る」と言うとき、多くの場合はマンションを売る話になります。
中古マンションの中央値は3,700万円です。面積あたりでは99万円/平方メートルでした。成約がこれだけ多い区では、同じ駅、同じ築年帯、同じ広さの事例が、短い期間に何件も見つかります。
査定を受けるとき、「どの成約と比べてこの金額なのか」を聞けば、担当者は具体的な事例で答えられるはずです。答えられない査定額は、根拠が薄いと考えてかまいません。
一方で、売り出したあとに競合が多いのも、成約が多い区の特徴です。同じ棟から別の部屋が同じ時期に出ることは珍しくありません。買い手は、階数・向き・価格を並べて見ます。
売り出す前に、同じマンションと近くの棟で今いくらの部屋が出ているかを確かめておきます。ここを見ずに値段を決めると、最初の数週間で問い合わせが来ない原因になります。
マンションの査定で聞かれる書類や、戸建てと違う準備は中古マンションを売るにまとめてあります。
1Kと3LDKが多い。総額で比べる部屋と、面積単価で比べる部屋が同じ区に混ざっている
墨田区のマンション成約で、いちばん多い間取りは1Kです。次が3LDKです。
1Kは一人で住む広さで、3LDKは家族向けの広さです。間の2LDKや1LDKではなく、両端の二つが上位に来ているのが墨田区の特徴です。
この二つは、買い手も、値段の決まり方も違います。1Kは、自分で住む人のほかに、貸す目的で買う人が多い間取りです。貸す目的の買い手は、面積あたりの単価より、総額と家賃の釣り合いで判断します。
3LDKは、自分で住む家族が買い手の中心です。こちらは、同じ広さの部屋と面積単価で比べられます。
売る側が気をつけるのは、区の中央値3,700万円をどちらにも当てはめないことです。1Kを売る人は、この数字より低い帯で成約が並んでいます。3LDKを売る人は、逆に高い帯です。
どちらの人も、区の中央値を見ても自分の部屋の位置は分かりません。同じ間取りに絞った成約だけを材料にしてください。
査定書を受け取ったら、比較に使われた成約の間取りと専有面積を確かめます。1Kの査定に3LDKの面積単価が使われていたり、その逆だったりすることがあります。
面積単価は、広い部屋では低く、狭い部屋では高く出やすい性質があります。間取りをそろえずに単価だけ合わせると、値段が大きくずれます。
直近1年、マンションは上がり、戸建ては動いていない。使う成約の期間を分ける
墨田区の直近1年の成約を、その前の1年と比べました。中古マンションの中央値は、はっきり上がっています。
戸建ての中央値は、ほぼ横ばいでした。同じ区の中で、種類によって向きがそろっていません。
この違いは、値付けのときに「どの期間の成約を根拠にするか」という形で効いてきます。マンションを売る人は、2年前の成約を根拠にすると、今の水準より低い値段を付けてしまいます。
できるだけ直近の成約に絞って見ます。逆に、直近だけに絞ると件数が減るので、同じ棟や同じ築年帯で半年から1年の成約を集めるのが現実的です。
戸建てを売る人は、急ぐ必要が薄いかわりに、時期を待っても上がる材料は今のデータにはありません。横ばいの市場では、2年分ほどの成約をまとめて見ても、水準はほとんど変わりません。比べられる事例を増やすほうが、値段の精度は上がります。
なお、ここで言う「上がった」は、墨田区全体の中央値の話です。個別の棟や区画がすべて上がったという意味ではありません。自分の物件の値段は、最後は自分の物件に近い成約でしか決まりません。
マンションの段差は築21〜30年の先にある。築46年以上でも下げ幅は3割ほど
墨田区の中古マンションを築年帯ごとに並べると、値段は一定の割合で下がっていくのではなく、ある帯で段が付きます。中央値がいちばん大きく落ちるのは、築21〜30年から築31〜45年へ移るところです。
もう一つ目立つのは、その先です。築46年以上の中央値は、築10年以内と比べて3割ほど低い水準です。
築30年を越えたところで段が付いたあと、築46年以上になっても、下げ幅は3割ほどにとどまっています。築46年以上の部屋でも、値段が付かなくなる市場ではありません。
売る側が使えるのは、次の二点です。ひとつは、築20年代の後半の部屋は、段の手前にいるということです。同じ棟でも、築30年を越えた成約を根拠にされると、低い帯で比べられます。
査定で使われた成約の築年を確かめてください。もうひとつは、築46年以上でも成約は続いているということです。
古いから売れないと決めて、最初から買取だけに絞る必要はありません。仲介の査定と買取の価格を並べてから決めれば足ります。
ただし、築年帯は建物全体の条件です。同じ築46年以上でも、大規模修繕を済ませた棟と、積立金が足りない棟では、買い手の見方が変わります。修繕の履歴と長期修繕計画は、管理会社から取り寄せて、査定のときに渡しておきます。
改装済みの中央値は高い。どの間取りで、いくらかけたかで答えが変わる
墨田区の成約では、改装済みのマンションの中央値は、未改装より高く出ています。数字だけを見ると、「直してから売れば高く売れる」と読めます。そう単純ではありません。
理由は二つあります。ひとつは、改装費がそのまま値段に乗る保証がないことです。中央値の差が改装費より小さければ、直した分だけ手取りが減ります。
もうひとつは、改装される部屋は、もともと築年数が古いことが多い点です。改装の有無と築年数が絡み合っています。「改装したから高い」のか「もともとの条件で高い」のか、このデータだけでは分けられません。
墨田区では、1Kと3LDKで考え方が変わります。1Kは総額が小さいので、改装費が総額に占める割合が大きくなります。貸す目的の買い手は、自分で直す前提で買うことも多く、改装費を上乗せした値段を受け入れにくい面があります。
3LDKは、自分で住む家族が買い手なので、水回りの状態を見て判断することが多い間取りです。それでも、直すかどうかは、現況の査定額と直した場合の査定額を両方聞いてから決めます。先に直すのは、順番が逆です。
戸建ての下げは築46年以上で来る。マンションより段が一つ後ろにある
墨田区の戸建ての成約は795件で、中央値は6,300万円です。真ん中の半分は4,400万円から12,000万円の間に入ります。この幅が広いのは、築年数・土地の広さ・道路の条件がばらばらの家が、ひとつの「戸建て」にまとめられているからです。
築年帯ごとに見ると、戸建ての中央値がいちばん大きく落ちるのは、築31〜45年から築46年以上へ移るところです。マンションの段が築21〜30年から築31〜45年の間にあったのに対し、戸建ては段が一つ後ろにあります。築46年以上の中央値は、築10年以内より3割ほど低い水準です。
戸建てで段が後ろに来る理由は、値段のうち土地が占める割合にあります。建物が古くなって評価が減っても、土地の分は残ります。
築31〜45年の帯では、建物の評価が減った分を土地が支えている形です。築46年以上で落ちるのは、建物の評価がほぼなくなったうえに、建て替えや解体を前提に買い手が値段を見るからです。
ここから言えるのは、築40年前後の戸建ては、まだ段の手前にいるということです。建物が古いことを理由に、最初から更地にして売る必要はありません。
古家付きのまま出した場合と、解体して出した場合で、値段と費用がどう変わるかを先に聞きます。解体費を自分で払って更地にしても、その分だけ高く売れるとは限りません。
戸建ての成約がいちばん多いのは準工業地域。中央値がいちばん高いのは商業地域
墨田区の戸建てを用途地域ごとに分けると、成約がいちばん多いのは準工業地域です。中央値がいちばん高いのは商業地域で、いちばん低いのは準工業地域です。つまり、墨田区で戸建てを売る人の多くは、中央値がいちばん低い用途地域で売ることになります。
用途地域は、都市計画法で定められた、建てられる建物の種類と大きさの枠です。商業地域は建ぺい率や容積率の上限が大きく、同じ広さの土地でも大きな建物を建てられます。
準工業地域は住宅と工場が混ざることを前提にした地域で、買い手の層が商業地域とは違います。戸建ての中央値に差が出るのは、建物の良し悪しより、土地の上に何をどこまで建てられるかの差です。
準工業地域の戸建てを売る人が、商業地域の成約を見て値段を決めると、高すぎて売れません。逆に、商業地域の家を準工業地域の成約で値付けすると、安く手放すことになります。自分の土地の用途地域は、購入時の重要事項説明書に書いてあります。
手元になければ、区の都市計画の窓口で調べられます。査定を受ける前に確かめて、担当者に伝えておきます。
用途地域と合わせて、区画の形が値段に効くことも知っておいてください。同じ用途地域でも、整った形の土地と、奥に細長い土地では、建てられる建物の形が変わります。
前面道路は4m未満・4〜6m・6m以上の三段で中央値が分かれる
墨田区の戸建てを前面道路の幅で分けると、4m未満、4〜6m、6m以上の三つの区分で、中央値に差が出ています。道路の幅は、後から変えられない条件です。建物をどれだけ直しても、この差は埋まりません。
建築基準法では、建物を建てる敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。前面道路が4m未満の場合、建て替えのときに敷地を道路の中心から2m後退させる必要が出ることがあります。後退した分は敷地として使えません。
買い手は、この家を買ったあとに建て替えられるか、建て替えたら今より小さくなるかを見ます。4m未満の道路に面した家が低い帯に入るのは、この理由です。
4m未満の家を売る人は、査定の前に二つを確かめておきます。ひとつは、その道路が建築基準法上の道路として扱われているかどうかです。区の建築指導の窓口で調べられます。
もうひとつは、過去に後退を済ませているかどうかです。済ませていれば、その分を伝えることで、買い手の不安がひとつ減ります。道路の条件が厳しく、建て替えが難しい場合の売り方は再建築不可物件を売るで整理しています。
6m以上の道路に面した家は、それ自体が売りになります。車の出し入れ、工事車両の入りやすさ、日当たりの確保という点で、買い手から見た価値が違います。
築年数が古くても、道路の条件が良ければ、建て替え前提の買い手が付きます。査定のときは、前面道路の幅と接している長さを、最初に伝えてください。
土地の成約はいちばん少ない。値段の手がかりは戸建ての成約にある
墨田区で土地だけの成約は238件で、三つの種類の中でいちばん少ない数です。面積あたりの中央値は80万円/平方メートルでした。件数が少ないので、この数字だけで自分の土地の値段を決めるのは危険です。
土地を売る人が使える材料は、土地そのものの成約より、戸建ての成約にあります。墨田区の戸建ては795件あり、築46年以上の成約は、値段のほとんどが土地の分です。同じ用途地域、同じ道路の幅、近い広さの古い戸建ての成約を集めれば、自分の土地が入る帯が見えてきます。
土地を売るとき、古家付きで出すか更地にするかは、先に決めないでください。墨田区では、準工業地域に成約が集まっています。買い手が住宅用か、それ以外の用途かで、古家の扱いも変わります。
解体してから売り出すと、費用が先に出ていきます。買い手が決まってから解体する条件で売れることもあります。境界が確定しているかどうかも、土地の売却では最初に確かめる点です。
隣地との境界が決まっていない土地は、契約の前に測量が必要になります。進め方は土地を売るにまとめてあります。
墨田区で売るときに、先に済ませておく三つのこと
ここまでの内容を、売る人の手順に直します。墨田区の特徴から、査定の前に済ませておくと値段の精度が上がることが三つあります。
一つ目は、比べる成約を自分で絞ることです。マンションなら、同じ間取り・同じ築年帯・直近1年の成約です。1Kと3LDKを混ぜない、築30年の前後を混ぜない、2年前の成約を根拠にしない。
この三つを守るだけで、区の中央値とのずれがなくなります。戸建てなら、同じ用途地域・同じ道路の幅の成約です。
二つ目は、自分の物件の「変えられない条件」を書き出すことです。マンションなら、築年、専有面積、間取り、修繕の履歴、管理費と修繕積立金の額です。戸建てなら、用途地域、前面道路の幅、接している長さ、後退の有無、境界の確定状況です。
これらは、購入時の重要事項説明書と、管理会社や区の窓口で確かめられます。査定のときに先に渡すと、根拠のある値段が返ってきます。
三つ目は、査定を一社で終わらせないことです。墨田区は成約が多いので、担当者によって、どの成約を根拠にするかが変わります。
複数の査定を並べて、金額ではなく根拠の違いを見ます。いちばん高い金額を出した会社ではなく、自分の物件に近い成約を根拠にした会社を選びます。
査定から引き渡しまでの順番と期間の目安は家を売る流れは7ステップにまとめています。仲介手数料や登記の費用など、売るときに出ていくお金の一覧は不動産売却でかかる費用の一覧で確かめられます。墨田区に限った話ではないので、ここでは繰り返しません。