浪速区の成約はマンションが戸建ての9倍近い。戸建ての相場より先に、マンションの相場を読む
国交省の不動産情報ライブラリで、大阪市浪速区の2023〜2025年の成約を種類ごとに数えました。中古マンションが1,358件です。
土地と建物をまとめて売った戸建ては152件で、マンションの9倍近い差がついています。土地だけの取引は55件で、三つの中で最も少ない種類です。
浪速区で「家を売る」と言えば、ほとんどの場合はマンションの部屋を売ることです。この記事は、その順番で書きます。戸建てと土地の話は後ろに回します。
マンションの中央値は1,900万円です。面積あたりでは80万円です。戸建ての中央値は9,200万円です。
安いほうから4分の1の値は4,500万円、高いほうから4分の1の値は28,000万円です。戸建ては件数が少ないぶん、この幅の中のどこに入るかが一軒ごとに大きく違います。
マンションの中央値は、一つの数字で区全体を代表させた値です。浪速区では、この数字の読み方に注意が要ります。理由は次の節の間取りにあります。
最多は1K、次が2LDK。3LDKではなく2LDKが2番目に来る区では、買い手が二通りに分かれる
浪速区の中古マンションで最も多く成約した間取りは1Kです。次に多いのは2LDKです。ファミリー向けの3LDKが2番目に来ない、というのが浪速区の成約の形です。
1Kを買う人の多くは、自分で住むためではなく、貸すために買います。この買い手は、部屋の値段を家賃から逆算します。月の家賃に対して、買値がどのくらいの利回りになるか。
管理費と修繕積立金を引いた後に、いくら残るか。見ているのはそこです。部屋の内装や眺めは、家賃に反映される範囲でしか値段に乗りません。
2LDKは、自分で住むために買う人が入ってくる間取りです。この買い手は、家賃ではなく「住んだときの暮らし」で値段を決めます。部屋の向き、収納、管理の状態、建物の雰囲気が、そのまま値段に響きます。
売る側に起きる問題は、この二通りの買い手が同じ区の中に混ざっていることです。区全体の中央値1,900万円は、1Kの成約に引っ張られています。面積あたりの単価80万円も同じです。
小さな部屋は面積あたりの単価が高く出やすいため、2LDKの査定に1Kの単価を当てはめると、高めの数字が出ます。売り出してから下げることになります。
査定を受けるときは、根拠にした成約が自分と同じ間取り帯かどうかを聞いてください。1Kを売るなら、いまの家賃と契約の残り期間を先に伝えます。入居者がいる部屋は、賃貸借契約ごと買い手に引き継ぐ形で売ります。
借地借家法では、貸主の都合だけで退去を求めることはできません。住むために買う人には売れず、買い手は貸すために買う人に絞られます。マンション全体の進め方は、中古マンションを売る にまとめています。
浪速区のマンションは、築年の帯で中央値が階段状に落ちない。古い部屋を売る前に確かめること
浪速区の中古マンションを築年の帯で分けると、築46年以上の中央値は、築10年以内からあまり下がっていません。築年が増えるにつれて値段が段々と落ちる、という形になっていないのが浪速区のデータです。
なぜそうなるのか、浪速区の成約データだけでは理由を断定できません。考えられることは二つあります。一つは、間取りの構成です。
貸すために買われる1Kは、家賃で値段が決まります。築年が古くても、家賃が大きく落ちていなければ、買値もそれほど落ちません。もう一つは、帯ごとの顔ぶれです。
築46年以上の帯に入る部屋と、築10年以内の帯に入る部屋では、建っている場所も広さも同じではありません。中央値は、その顔ぶれの違いをそのまま映します。
ここで気をつけたいのは、この数字を「古くても値段は落ちない」と読み替えないことです。区全体の中央値が落ちていなくても、自分の部屋がその水準で売れるとは限りません。築46年以上の建物は、1981年6月に耐震の基準が改められる前に建てられています。
買い手がローン控除を使うには、1982年以降の建築か、耐震基準に適合している証明が要ります。証明がない建物は、買い手がローンを組みにくくなり、現金で買う人に絞られます。
鉄筋コンクリート造の住宅は、税務上の耐用年数が47年と定められています。築46年以上の帯は、建物の評価がほぼ残らないとされる年数に差しかかっています。それでも中央値が落ちていないのは、浪速区のデータの特徴です。
ただし、管理組合の積立金が足りているか、大規模修繕が予定どおり行われているかで、同じ築年でも値段は分かれます。古い部屋を売る前に、管理組合の総会議事録と長期修繕計画を手元に置いてください。査定の根拠がはっきりします。
改装済みの中央値が高い区で、1Kと2LDKでは「直す」の意味が違う
浪速区の中古マンションは、改装済みの中央値が未改装より高く出ています。ただし、かけた改装費がそのまま売値に乗る、とは読めません。改装した部屋が高く売れたのか、高く売れる部屋が改装されていたのか、データでは区別がつかないからです。
浪速区では、間取りによって「直す」の意味が変わります。1Kを貸している部屋なら、改装は入居者が替わるたびの原状回復の延長です。
次の買い手も貸す目的なので、見るのは家賃が上がるかどうかです。家賃が変わらない改装は、買値にもほとんど乗りません。
2LDKを自分で住んでいた人が売るなら、話が変わります。住むために買う人は、内装を見て値段を決めます。
水回りの古さや壁紙の傷みは、そのまま値引きの材料になります。ただし、直した費用と上がる値段が釣り合うかは、直す前に査定で確かめるしかありません。
進め方は一つです。直す前に、現況のままの査定額と、直した場合の査定額を両方出してもらいます。
その差が改装費を下回るなら、直さずに売ります。この判断の材料は、売る前にリフォームすべきか にまとめています。
直近1年、マンションも戸建てもやや上がった。上がった年の査定で聞くこと
浪速区の直近1年の中央値は、中古マンションも戸建ても、前の1年よりやや上がりました。二つの市場が同じ向きに動いた年です。
「やや」の幅は、その年に売れた物件の顔ぶれが変わるだけでも出ます。築の浅い部屋が多く売れた年は中央値が上がり、古い部屋が多く売れた年は下がります。区全体の値段が上がった、と決めつける材料にはなりません。
売る側にとって意味があるのは、上がった年に出る査定額の読み方です。査定の根拠が前の1年の成約なら、いまの買い手の目線より低めに出ることがあります。逆に、直近の高めの成約だけを根拠にした査定は、売り出してから届かないことがあります。
査定を受けたら、根拠にした成約がいつのものか、何件あるかを聞いてください。上がった年ほど、この確認が効きます。
もう一つ。中央値が上がった年に「もう少し待てばもっと上がる」と考える人がいます。
浪速区のデータは、次の1年がどうなるかを何も言っていません。待つかどうかは、売る理由の期限で決めてください。
戸建ては152件。築46年以上に入るところで最も下がるが、築10年以内とはあまり差がない
ここからは戸建ての話です。浪速区の戸建ての成約は152件で、中央値は9,200万円です。
築年の帯で分けると、浪速区の戸建てには一見すると矛盾した形が出ています。中央値が最も大きく落ちるのは、築31〜45年から築46年以上に移るところです。ところが、築46年以上の中央値は、築10年以内からあまり下がっていません。
この二つは同時に成り立ちます。築31〜45年の帯の中央値が、築10年以内より高く出ていれば、そこから大きく落ちても築10年以内の近くに戻るだけです。
件数が152件の市場を五つの帯に分けると、一つの帯に入る家はわずかです。その帯の中央値は、たまたま売れた家の土地の広さや道路の条件で動きます。
読み方としては、浪速区の戸建ての帯ごとの中央値を、築年の目安として使わないことです。木造住宅の税務上の耐用年数は22年です。築46年以上の家は、建物の評価がほぼ残らず、値段は土地の条件で決まっています。
築10年以内の家と築46年以上の家の中央値が近いのは、土地の値段が効いているからだと考えるのが自然です。ただし、浪速区のデータだけでは断定できません。
査定を受けるときは、築年の帯ではなく、土地の広さと前面道路の幅が近い成約を根拠にしてもらってください。浪速区の戸建てで値段を分けているのは、次の節の道路の幅です。
戸建ての中央値は、前面道路が6m以上か4〜6mかで分かれる。幅は道路の管理者に確かめる
浪速区の戸建ては、前面道路の幅で中央値に差が出ています。差が見えているのは、6m以上の道に面した家と、4〜6mの道に面した家の間です。
道路の幅が値段に効く理由は、法律にあります。建築基準法では、建物を建てる敷地は幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。4〜6mの道は、この条件を満たしています。
それでも6m以上の道と差がつくのは、買い手が「建て替えた後」を見ているからです。道が広いと、工事車両が入りやすく、駐車場の出入りがしやすく、建物の配置の自由度が上がります。買った後にかかる手間と費用が違うぶん、値段に反映されます。
売る側がやることは、自分の家の前の道の幅を、自分の目ではなく書類で確かめることです。道路の幅は、市の道路を管理する部署で台帳を見れば分かります。
建築基準法上の道路にあたるかどうかは、市の建築指導を担当する窓口で調べられます。購入時の重要事項説明書に書いてあれば、それも使えます。
幅が4m未満の道に面している場合は、建て替えのときに道路の中心から2mまで敷地を後退させる必要が出ることがあります。浪速区のデータで差が見えているのは6m以上と4〜6mの間ですが、4m未満の家は別の問題を抱えます。
後退が済んでいるかどうかを、査定の前に調べておいてください。査定のときに、道路の幅と接道の状況を先に伝えると、根拠のある金額が返ってきやすくなります。
土地だけの成約は55件で最も少ない。単価93万円は、解体して更地にするか決めるときの物差し
浪速区で土地だけを売った成約は55件です。マンション、戸建て、土地の三つの中で最も少ない種類です。面積あたりの中央値は93万円です。
この単価を浪速区で使う場面は、古い戸建てを売るときです。前の節で見たとおり、築46年以上の家は値段がほぼ土地で決まります。その家を建物付きのまま売るか、解体して更地で売るかを決めるとき、土地の単価が判断の材料になります。
更地にすると、買い手は建て替えの手間がなくなるぶん、買いやすくなります。ただし解体費は売る側の負担です。解体費を引いた後の手取りが、建物付きのまま売った場合の手取りを上回るかどうかで決めます。
浪速区の土地の単価93万円に土地の面積をかけた金額が、更地にしたときの値段の出発点です。そこから解体費を引き、建物付きの査定額と並べてください。
もう一つ、55件という数は、土地の単価の根拠として多くありません。同じ区の中でも、道路の幅や土地の形で単価は変わります。
区全体の単価をそのまま自分の土地に当てはめず、査定で確かめてください。更地か古家付きかの見極めは、更地で売るか、古家付き土地のまま売るか に整理しています。
浪速区で売るときの実務。マンションは管理組合の書類から、戸建ては道路の幅から
浪速区で売る人の大半は、マンションの部屋を売ります。最初にそろえるのは、管理組合の書類です。管理規約、長期修繕計画、直近の総会議事録、管理費と修繕積立金の額が分かる書面。
この四つで、買い手が聞くことのほとんどに答えられます。手元になければ、管理会社から取り寄せられます。1Kを貸している部屋なら、賃貸借契約書と直近の家賃の入金記録も加えます。
戸建てを売る人は、道路の幅と接道の状況を先に確かめます。前の節で書いたとおり、浪速区の戸建ては道路の幅で中央値が分かれています。築46年以上の家は、建物付きのまま売るか更地にするかを、土地の単価と解体費から決めます。
査定は、間取り帯か道路条件が近い成約を根拠にしたものを、複数の会社から出してもらいます。金額の大小ではなく、根拠にした成約の件数と時期を比べてください。浪速区では、1Kの成約を根拠にした2LDKの査定、築年の帯だけで出した戸建ての査定が、売り出し後のずれを生みます。
かかるお金は、仲介手数料、登記に関する費用、売った利益が出た場合の税金が中心です。仲介手数料は法律で上限が決まっています。費用の内訳は 不動産売却でかかる費用の一覧 にまとめています。
査定から引き渡しまでの順番は 家を売る流れは7ステップ を見てください。浪速区のデータで言えることは、この記事に書いたとおりです。自分の物件がその中のどこに入るかは、査定で確かめてください。