福島区の市場は中古マンションが1,387件で決まる
国交省の不動産情報ライブラリに載っている、大阪市福島区の2023〜2025年の成約を数えました。中古マンションが1,387件ありました。
土地と建物をセットで売った戸建ては229件です。土地だけの取引は55件で、三つの中で最も少ない数です。
中古マンションは、中央値が3,500万円でした。専有面積1㎡あたりに直すと、中央値は80万円です。戸建ては中央値が4,200万円でした。
真ん中の半分は2,200万円から6,300万円の間に入ります。土地は面積あたりの中央値が60万円/㎡です。
福島区で売る人の大半は、マンションの売り手です。この記事もマンションから書きます。戸建てと土地は後半にまとめました。
マンションが1,387件あるということは、比べる相手に困らないということです。同じ棟の成約、同じ間取りの成約、同じ築年帯の成約が、たいてい見つかります。裏返すと、買い手も同じ数の事例を見ています。
福島区のマンション査定では、どの成約を根拠にしたかを必ず聞いてください。件数が多い市場では、根拠の選び方ひとつで査定額が変わります。
マンションの中央値は築21〜30年に入るところで最も下がる。その先はゆるやか
福島区の中古マンションを築年帯で並べると、落ち幅が最も大きいのは築11〜20年から築21〜30年へ移るところです。築10年以内と築46年以上を比べると、中央値の差は3割ほどです。つまり、下がる分の多くが築20年前後で先に出て、そのあとの帯は落ち方がゆるくなっています。
売る側にとって意味があるのは、この形です。築11〜20年の帯にいる人は、いま売るか次の帯に入ってから売るかで、比べられる成約の水準が変わります。
逆に築21〜30年より先の帯にいる人は、急いで売る理由がデータ上は薄くなります。築30年を過ぎても、築46年以上までの落ち方はゆるやかだからです。
鉄筋コンクリート造の住宅は、税法上47年かけて建物の価値が減る扱いです。帳簿の計算では、建物の価値は毎年同じ割合で減っていきます。福島区の成約価格は、その直線とは違う形をしています。
築20年前後で先に下がり、そのあとは帳簿ほど減っていません。買い手が払う金額は帳簿ではなく、そのとき出ている成約で決まっています。
築46年以上の部屋を売るときは、別に用意するものがあります。2026年時点で築46年以上の建物は、1980年以前の建築です。耐震基準が改正されて新しくなったのは、1981年6月です(建築基準法)。
それより前の建築確認で建った建物は、旧耐震に当たります。買い手が住宅ローン控除を使う条件は、1982年以降の建築であることです。耐震基準に適合している証明があれば、それでも通ります(租税特別措置法第41条)。
管理組合に耐震診断の記録があるかを、売り出す前に確かめておいてください。記録があれば、査定の最初の場で渡します。
最多の間取りは1K。福島区のマンションは「住まない買い手」も値段を決める
福島区の中古マンションで最も多い間取りは1Kで、次が3LDKです。この順番が、売り方を決めます。
1Kの買い手には、自分で住む人のほかに、貸して家賃を得るために買う人がいます。後者は、部屋の価格を家賃との比率で見ます。
同じ1Kでも、いまの家賃が高いほど高く値付けされます。空室なら「いくらで貸せるか」の見込みで見られます。
1Kが最多ということは、売りに出ている1Kも多いということです。家賃目的の買い手は、区内の1Kを家賃と価格の比率で横に並べます。
自分の部屋だけを見て値段を決めても、買い手の側では比率の一覧の中の一行です。売り出し価格を決める前に、同じ築年帯の1Kがいくらで成約しているかを確かめてください。
借り手がいる部屋を売るときは、出てもらってから売るか、いるまま売るかが分かれ道です。借り手がいるまま売る取引はオーナーチェンジと呼ばれ、契約は買い手に引き継がれます。この場合、買い手は自分で住めないので、家賃目的の人に絞られます。
空室で売れば、自分で住む人も買い手に入ります。ただし、売るために退去を求めるには、借地借家法で貸主側に正当な事由が要ります。
売りたいという理由だけでは、契約を終わらせられません。借り手がいるなら、いるまま売る前提で先に査定を受けてください。
3LDKは事情が変わります。買い手はほとんどが自分で住む人で、家賃との比率では見ません。見るのは、同じ区の3LDKと並べたときの価格、築年、階、向きです。
同じ棟に3LDKが複数あれば、同時に売りに出たとき価格で比べられます。売り出しの時期は、同じ棟の売り出し状況を確かめてから決めてください。
1Kと3LDKでは、査定で先に渡すものも違います。1Kなら、賃貸借契約書、家賃と敷金の額、管理費と修繕積立金の月額です。3LDKなら、長期修繕計画、直近の総会議事録、駐車場の空き状況です。
どちらも管理会社から取り寄せられます。マンションならではの準備は、中古マンションを売る に分けて書いています。
直近1年は、マンションも戸建ても中央値が上がった
直近1年の中古マンションの中央値は、その前の1年と比べてはっきり上がりました。戸建ても同じ方向で、はっきり上がっています。福島区では物件の種類にかかわらず、直近1年の成約が前の年より高い水準にあります。
ただし、この二つの「上がった」は、同じ重さではありません。マンションは1,387件の中の直近1年なので、1年分でも相当の件数があります。戸建ては229件の中の直近1年です。
件数が少ないと、その年にたまたま広い家や新しい家が多く売れただけで中央値が動きます。戸建ての上昇は、どんな家が売れた結果なのかを見ないと読み違えます。
査定の場で使える聞き方があります。「直近1年の成約で出した数字」と「3年分で出した数字」を分けて出してもらうことです。マンションなら、二つの差がそのまま市場の動きを表します。
戸建てなら、直近1年の根拠にした成約の築年と面積を一件ずつ聞きます。自分の家と条件が違う成約で上がって見えているなら、その分は差し引いて考えます。
上がった理由は、このデータからは分かりません。「まだ上がる」とも「ここが天井」とも言えません。言えるのは、いま査定を受けるなら、直近1年の成約を根拠にした数字を必ず見るべきだ、ということです。
改装済みの中央値は未改装より高い。理由は一つではない
福島区の中古マンションは、改装済みの中央値が未改装より高くなっています。この差を「改装すれば上がる」と読むのは早すぎます。
理由が一つではないからです。改装済みの中には、不動産会社が買い取って直し、売り直している部屋が含まれている可能性があります。その場合、価格には改装費だけでなく会社の利益と経費も乗っています。
個人が同じ改装をしても、同じ価格になるとは限りません。1Kが多い区では、貸すために直した部屋が売りに出ることもあります。その部屋の価格は、家賃との比率で決まっている場合があります。
手順は決まっています。先に、いまの状態のまま査定を受けます。そのうえで「直した場合にいくら変わるか」を担当者に聞きます。
差額が改装費を下回るなら、直さずに売るほうが手元に残ります。差額が上回る場合だけ、直す意味があります。水回りの故障など、内見で明らかに不利になる箇所は別に考えます。
売る前に直すかどうかの判断は、売る前にリフォームすべきか に愛知の実データで整理しています。地域は違いますが、判断の順番は同じです。
戸建ては築21〜30年から築31〜45年に移るところで最も下がる
ここから戸建ての話です。福島区の戸建ては229件、中央値は4,200万円です。真ん中の半分は2,200万円から6,300万円に収まります。
築年帯で見ると、落ち幅が最も大きいのは築21〜30年から築31〜45年へ移るところです。築46年以上の中央値は、築10年以内の半分以下まで下がります。
マンションと折れる場所が違います。マンションは築21〜30年に入るところで最も下がりました。戸建ては、その一つ先の帯に移るところで最も下がります。
木造の住宅は、税法上22年で建物の価値が尽きる計算になっています。築21〜30年の帯の途中で帳簿上の建物の価値が尽き、次の帯に入ると成約価格もそれに追いつく形になっています。
築21〜30年の戸建てを持っている人は、いまの帯と次の帯で中央値の差が大きいことを知っておいてください。築31年以降の帯に入った家は、価格の多くが土地の分で決まります。
そこから先は、建物を直すより、土地の条件を正しく伝えるほうが価格に効きます。土地の条件とは、次の二つの節で扱う用途地域と前面道路の幅です。
戸建ての中央値は商業地域が最も高く、準工業地域が最も低い
福島区の戸建ての成約を用途地域で分けると、中央値が最も高いのは商業地域です。最も低いのは準工業地域です。成約の件数が最も多いのは、第2種住居地域です。
用途地域は都市計画法で定められた、建てられる建物の種類と大きさの区分です。商業地域は商業などの業務の利便を進めるための地域で、店舗や事務所、住宅が同じ区域に建ちます。
準工業地域は、環境を悪化させるおそれの少ない工場の利便のための地域で、工場と住宅が隣り合うことがあります。第2種住居地域は、住居の環境を守るための地域です。
商業地域の戸建てが高いのは、土地の使い道が広いからだと考えられます。建てられる建物の用途と大きさの枠が広いと、自分で住む人以外の買い手が混じります。その場合、家としての値段ではなく土地としての値段で見られます。
準工業地域の戸建ては、買い手が周りに何が建っているかを見ます。同じ区で同じ築年でも、用途地域が違えば比べる成約が変わります。
件数が最も多いのは第2種住居地域なので、福島区で戸建ての成約事例を集めやすいのはこの地域です。商業地域や準工業地域の戸建ては事例が少なく、一つの成約に中央値が引っ張られやすくなります。自分の土地の用途地域は、大阪市が公開している都市計画の情報で調べられます。
購入時の重要事項説明書にも記載があります(宅建業法第35条)。査定の前に確かめて、担当者に先に伝えてください。
用途地域と土地の形が価格に効く仕組みは、土地の形と用途地域で、価格はどう変わるか にまとめました。愛知の実データですが、見方は福島区でも同じです。
幅4m未満の道に面した戸建ては、後退の有無を先に調べる
福島区の戸建ては、前面道路の幅が4m未満・4〜6m・6m以上の区分で中央値に差が出ています。道路の幅は、売り手が自分で変えられる条件ではありません。
建築基準法では、建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります(第43条)。幅4m未満でも、法の施行前から建物が並んでいた道で、行政が指定したものは道路として扱われます(第42条第2項)。
この道に面した敷地で建て替えるときは、道路の中心線から2mの線まで敷地を後退させます。後退した部分には建物を建てられず、敷地面積の計算からも外れます。
4m未満の道に面している家は、すでに後退を終えているかどうかで話が変わります。売り出す前に確かめてください。済んでいれば、後退後の面積で話ができます。
済んでいなければ、買い手は建て替えで敷地が減る前提で価格を考えます。どちらであっても、最初に伝えるほうが話が早く進みます。あとから分かると、値引きの理由にされます。
6m以上の道に面した家は、この心配がありません。車の出入りがしやすく、建て替えや解体のときに重機が入れます。
買い手が「買った後にかかる費用」を少なく見積もれる分が、価格に出ています。4〜6mはその中間で、後退の必要はないものの、道の広さが買い手の評価に入ります。
土地だけの取引は最も少ない。55件の単価をどう使うか
福島区で土地だけの成約は55件です。面積あたりの中央値は60万円/㎡です。
この単価を、自分の敷地面積に掛けて目安にしたくなります。福島区ではそれが効きません。前の二つの節で見たとおり、用途地域と前面道路の幅で戸建ての中央値が分かれています。
土地の単価も、同じ条件で動きます。件数が少ない市場では、商業地域の成約が一件入るだけで中央値が上がります。
土地の査定を受けるときは、根拠にした成約の用途地域、前面道路の幅、面積を一件ずつ聞いてください。築31年以上の戸建てを「土地の値段」で査定された場合も、同じ確かめ方が使えます。自分の土地と条件が違う成約が根拠に混ざっていれば、その分を差し引いて考えます。
福島区で売るときに、最初にそろえるもの。進め方とかかるお金
進め方は、マンションでも戸建てでも大きくは変わりません。査定、媒介契約、売り出し、売買契約、引き渡しの順に進みます。各段階にかかる期間の目安は、家を売る流れは7ステップ にまとめています。
福島区で違うのは、査定の最初に渡すものです。この記事で見たとおり、福島区の価格は次の項目で分かれています。マンションなら、築年、間取り、借り手の有無、改装の有無です。
戸建てなら、築年、用途地域、前面道路の幅と後退の有無です。1Kなら賃貸借契約書と家賃の額、築46年以上なら耐震診断の記録を加えます。
価格に差が出る項目を最初に渡すと、査定の根拠が固まります。聞かれてから探すより、先に出すほうが早く進みます。
売却で出ていくお金は、仲介手数料と印紙代、登記の費用、それに譲渡所得税です。それぞれの計算と支払う時期は、不動産売却でかかる費用の一覧 に分けて書いています。借り手がいる部屋を売る場合は、敷金の引き継ぎと日割り家賃の清算が別に加わります。