名古屋市千種区・中村区・緑区・守山区・中川区。この5区で、築31〜45年、いわゆる築40年前後の戸建てが実際いくらで売れているかを見ました。国土交通省の実データ(2023年2Q〜2025年4Q)では、区によって大きな差があります。
中央値は千種区6,250万円、中村区3,400万円、緑区2,900万円、守山区2,600万円、中川区2,500万円。同じ築40年前後でも、2倍以上の開きがあります。
建物の評価が下がっても、土地の価値は区ごとの水準を強く反映するためです。まず自分の区の実データを見て、直す・直さないは価格を確かめてから決めます。
築40年前後の家は、実際いくらで売れているか
国土交通省の不動産情報ライブラリには、実際に成約した取引価格が蓄積されています。ここでは築31〜45年帯(築40年前後の目安)の戸建てを、名古屋市の5区で比べました。期間は2023年2Q〜2025年4Q、件数10件未満の帯は除いています。
| 区 | 中央値 | 価格帯(25%〜75%) | 件数 |
|---|
| 千種区 | 6,250万円 | 4,300万〜1億2,000万円 | 68件 |
| 中村区 | 3,400万円 | 1,900万〜7,600万円 | 73件 |
| 緑区 | 2,900万円 | 2,200万〜4,200万円 | 99件 |
| 守山区 | 2,600万円 | 1,800万〜3,600万円 | 84件 |
| 中川区 | 2,500万円 | 1,300万〜3,900万円 | 101件 |
最も高い千種区と、最も低い中川区では、中央値で2.5倍の差があります。同じ「築40年前後の戸建て」という括りでも、区が違えば水準はまったく別物です。千種区は名古屋大学に近い文教エリアで、地価が高い区です。
中川区・守山区は住宅地としての面積が広い一方、地価の水準は千種区ほど高くありません。この違いが、そのまま戸建ての中央値の差になって表れています。
一方、マンションの築31〜45年帯を見ると、様子が変わります。千種区・中村区・緑区は中央値1,300万円、守山区は1,200万円、中川区は1,150万円。戸建てほどの差は出ていません。
マンションは敷地権(土地の持分)が専有面積で按分されて小さくなるため、戸建てに比べて地域差が出にくい傾向があります。戸建てを売るなら、まず自分の区の土地の水準を知ることが出発点になります。マンションを売るなら、区の差より、建物の管理状態や修繕履歴のほうが効いてくる場合があります。
築年数が進むと価格がどう動くかも、区によって表情が違います。緑区の戸建てはなだらかに下がっていきます。築10年内4,300万円→築11〜20年3,800万円→築21〜30年3,400万円→築31〜45年2,900万円→築46年以上1,800万円(いずれも70件以上)。
中川区も同じ傾向です。築10年内3,500万円→築31〜45年2,500万円→築46年以上1,100万円と下がります。
ところが千種区は違う動きを見せます。築10年内5,200万円→築31〜45年6,250万円で、むしろ上回っています。土地の価値が強いエリアでは、建物の古さより立地が支配的になります。
築年数だけでは説明できない動きが出ることもあります。「築40年だから安くなる」と一律には言えないのが、実データの示すところです。
解体して更地にすると土地の使い道は広がりますが、解体費がかかり、住宅用地に対する税の軽減が外れる場合があります。
建物価値と土地価値の関係。築40年前後の建物はどう評価されるか
戸建ての値段は、建物と土地を分けて考えます。建物は経過年数とともに評価が下がっていくのが一般的です。木造の税務上の評価の下がり方は、名古屋市で築30年の家を売る記事で詳しく整理しています。
築40年前後になると、建物の評価はかなり小さくなっていることが多いです。それでも今回のデータで区ごとに大きな差が出たのは、土地の価値が違うからです。戸建ての価格には土地の分がそのまま乗ります。
地価の高いエリアほど、建物が古くても価格が下がりにくくなります。逆に、地価がそれほど高くないエリアでは、建物の状態がより重要になります。土地の価値だけで押し上げられない分、雨漏りやシロアリの有無、リフォームのしやすさが査定の分かれ目になりやすいためです。
建築士の視点
築40年前後の家を見るとき、最初に確かめるのは築年数そのものより、雨と構造です。屋根・外壁からの雨漏りが柱や土台まで達しているか、床下にシロアリや基礎の割れがないか。ここが健全なら、内装や設備が古くても、買い手はリフォームを前提に評価できます。逆に、雨漏りや傾きが進んでいると、土地の価値が高いエリアでも評価は下がります。自分の家がどちらに近いかは、売れる家か、売りにくい家か。建築士視点のセルフチェックで確かめられます。
建物と土地では、価格の下がり方が違う。建物は年数とともに評価が下がっていくが、土地は残る。築年数が古い家の価格は、土地の値段に近づいていく。図は考え方を示したもので、実際の下がり方は建物の造りや手入れの状況で変わる。
引き渡したあとに雨漏りやシロアリが見つかったら、誰が直すのか
築40年前後の家を売る人が、最後まで気にするところです。売ったあとに不具合が出て、あとから請求されるのが怖い。
売買契約では、引き渡した物件が契約の内容に合っているかどうかが問われます。契約書に書かれていない不具合が後から見つかると、売主が修理や代金の減額を求められることがあります。契約不適合責任と呼ばれるものです。
ただし、責任を負う期間や範囲は契約で決められます。個人が売主の中古住宅では、期間を短く区切ったり、範囲を限定したりするのが実務では一般的です。仲介会社と条件を詰めるとき、ここは必ず確認しておきます。
そのうえで、一番効くのは単純なことです。知っていることを先に全部出す。雨漏りの跡、過去に修理した箇所、シロアリの駆除歴、床の傾き。
直っていなくても構いません。伝えて契約書や物件状況報告書に書いてもらえば、それは隠れていた不具合ではなく、買い手が承知のうえで買った前提になります。価格にもその分が織り込まれます。
よくないのは、知っていて黙っている場合です。あとで見つかれば、修理費の請求だけで終わらないこともあります。
築40年の家に傷んだ箇所があること自体は、買い手も想定しています。問題は、聞いていなかったものが出てくることです。
自分でも状態が読みきれないときは、売り出す前に建築士などに見てもらう手があります。屋根裏と床下を確かめておけば、何を伝えるべきかがはっきりします。
傷みが深く、引き渡し後のやり取りをできるだけ避けたい場合は、現況のまま引き渡す前提で買取を検討する方法もあります。仲介と買取で、この責任の扱いがどう変わるかは、仲介と買取の違いの記事で整理しています。
築40年の家は、誰が買うのか。買い手で見られる場所が変わる
築40年前後の家の買い手は、大きく2通りに分かれます。土地として買う人と、建物ごと使う人です。どちらが付くかで、値段の付き方も、売る前にやることも変わります。
土地として買う人は、建て替えを前提にしています。この場合、建物は解体するものとして見られます。土地の値段から解体の費用と手間を引いた金額が、出てくる価格です。
だから内装をきれいにしても、金額はほとんど動きません。効くのは土地のほうです。広さ、形、前面道路の幅、車が入れるか。
ここで決まります。更地にしてから売るか、古家付きのまま売るかも、この買い手を想定するかどうかで判断が変わります。考え方は更地で売るか、古家付き土地のまま売るかで整理しています。
建物ごと使う人は、買ったあとにいくらかければ住めるかを計算します。予算から工事費を引いた残りが、その人の出せる金額です。水回りや内装の交換で済むと読めれば、古くても候補に残ります。
逆に、構造まで手が要ると分かった時点で外れます。同じ家でも、この読みが人によって違うので、金額に幅が出ます。
自分の家にどちらの買い手が付きそうかは、査定を頼むときに聞けます。「土地として見る客と、建物ごと使う客のどちらを想定した金額ですか」。この一言で、査定額の根拠がはっきりします。
両方あり得る家なら、どちらに向けて売り出すかを選べます。解体の費用が価格からどう引かれるかは、解体費用と更地で売る進め方にまとめています。
測量図や確認済証が見つからない。境界と書類でつまずく前に
築40年前後の家を売るとき、金額より先に引っかかるのが境界と書類です。
土地として買う人は、面積が確定していないと動けません。ところが築40年前後だと、境界標が見つからないことがよくあります。隣との塀がどちら側のものか分からない、木や物置が越境している、というのも珍しくありません。
買い手や仲介会社から、確定測量をしてほしいと言われることがあります。土地家屋調査士に頼み、隣の人に立ち会ってもらう作業です。費用も時間もかかります。
誰が負担するかは契約の交渉次第です。境界の考え方は土地を売る記事で整理しています。
書類も同じです。買い手側が見たがるのは、登記の書類、測量図、それに建築確認済証や検査済証です。築40年前後だと、これが家のどこにもない状態が普通にあります。
親が建てた家を相続した場合はとくにそうです。役所に記録が残っていて、写しや証明が取れることもあります。
ただし何が取れるかは建てた時期と自治体で変わるので、調べてみないと分かりません。何を用意するかの全体像は不動産売却の必要書類にまとめています。
やることは単純です。査定を頼む段階で、手元にあるものと無いものを仲介会社に伝えます。「測量図が見当たらない」「確認済証は無い」と先に言っておけば、段取りを組んでもらえます。
黙っていても、契約の直前に必ず出てきます。そこから測量を始めると、買い手を待たせることになります。話が流れることもあります。
築40年の家は、買い手が住宅ローンを組めるのか
築40年前後の家が売れにくいと言われる理由の一つが、買い手側の融資です。売主からは見えにくいところですが、価格にも、話がまとまるかどうかにも効いてきます。
金融機関は、中古住宅を担保として評価します。建物が古いと、評価を土地の分だけで見たり、返済期間を短めに区切ったりする扱いになることがあります。どう扱うかは金融機関ごとに違います。
返済期間が短くなれば、買い手の月々の返済は重くなります。その分、出せる金額は下がります。同じ家を気に入っても、借りられる額で届かない人が出てきます。
もう一つは、契約したあとの話です。融資を使う買い手との売買契約には、審査が通らなかったときに契約を白紙に戻せる条件が付くのが一般的です。
買い付けが入って安心していたら、審査で止まって振り出しに戻ることがあります。築古の家では、これが起きやすくなります。
売主にできるのは、先に確かめておくことです。買い付けが入った段階で、仲介会社にこう聞きます。「現金ですか、融資ですか」「事前審査は通っていますか」「白紙解除の期限はいつまでですか」。
事前審査が済んでいる買い手なら、途中で止まる確率は下がります。金額が同じでも、確実さが違います。
金額の高い買い付けがそのまま成約になるとは限らない理由は、査定額と売却額は違うで整理しています。契約から引き渡しまでの流れは、家を売る流れは7ステップにまとめています。
名義は誰になっているか。契約できるのは所有者だけ
築40年前後の家でつまずきやすいのが、名義です。親や祖父母が建てた家だと、登記の名義がそのままになっていることがあります。
査定は、名義人でなくても頼めます。ただ、売買契約を結べるのは所有者本人だけです。ここが食い違ったまま話を進めると、買い手が決まってから止まります。
名義人がすでに亡くなっている場合は、先に相続登記を済ませます。相続人が複数いるなら、誰が引き継ぐかを決めるところからです。話がまとまらないうちは売り出せません。
相続登記には期限と過料の定めがあります。詳しくは相続登記の義務化と期限にまとめています。
兄弟の共有名義になっている家も同じです。売るには全員の同意が要ります。
一人でも売りたくないと言えば、その家は売れません。その場合にどんな選択肢があるかは、共有持分だけを売るで整理しています。
名義人が存命でも、判断能力が落ちていると本人の意思を確認できません。家族が代わりに売ることはできず、家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。時間がかかるので、早めに専門家に相談します。
やることは単純です。査定を頼む前に、登記事項証明書を取って今の名義を見ます。法務局で取れます。
手元の権利証や古い書類ではなく、今の登記を確かめます。名義が自分でないと分かったら、そこから先に片付けます。順番を逆にすると、買い手を待たせることになります。
高く・確実に売るための現実的な選択肢
築40年前後の家を売るとき、最初に全面リフォームや解体を決めてしまうのは避けたいところです。買い手は自分の好みで直したい人が多く、売主が先に手を入れても、費用が価格に乗るとは限りません。
直すなら、雨漏りや設備の重大な不具合など、危険につながる箇所に絞ります。見た目を整える工事は、売る前でなく、査定を取ったあとに判断しても遅くありません。
傷みが深い場合や、再建築不可・共有名義などの事情がある場合は、通常の仲介だけでなく、買取という選択肢も現実的です。現況のまま査定を依頼できる業者もあります。物件の種類ごとの売り方は、訳あり・難あり物件を売る記事で整理しています。
まず、自分の区の実データと、建物の状態を確かめます。そのうえで、直す・直さない・買取のどれが合うかを判断します。この順番が、費用も時間も無駄にしにくい進め方です。