名古屋市で築20年前後の戸建ては、区によって値段の水準が大きく違います。国交省の実データ(2023年第2四半期〜2025年第4四半期)では、千種区の中央値5,600万円(53件)に対し、中川区は3,000万円(92件)。約1.9倍の開きです。
木造の建物評価は年数とともに下がりますが、値段の多くを支えているのは土地の価値です。築20年前後だから売れないとは言えず、まず自分の区の実際の価格を確かめるところから始めます。
築20年前後の家は、実際いくらで売れているか
国土交通省 不動産情報ライブラリで、名古屋市5区の「築11〜20年」の成約価格を集計しました(2023年第2四半期〜2025年第4四半期の取引、2026年7月26日取得)。「築11〜20年」は、2026年時点でおおむね2006年〜2015年に建てられた家にあたります。
| 区 | 戸建て 中央値(件数) | マンション 中央値(件数) |
|---|
| 千種区 | 5,600万円(53件) | 4,300万円(409件) |
| 緑区 | 3,800万円(141件) | 2,900万円(97件) |
| 中村区 | 3,500万円(55件) | 2,500万円(77件) |
| 守山区 | 3,200万円(66件) | 2,400万円(101件) |
| 中川区 | 3,000万円(92件) | 2,600万円(88件) |
戸建てだけを見ても、千種区5,600万円と中川区3,000万円で約1.9倍の差です。マンションも千種区4,300万円と守山区2,400万円で約1.8倍の開きがあります。「築11〜20年」という条件は同じでも、区が変われば値段の水準そのものが変わります。
自分の区の詳しい価格帯は、区ごとのページで確認できます。名古屋市千種区の不動産売却、名古屋市緑区の不動産売却、名古屋市中川区の不動産売却。
外壁の色あせは、買い手が値段を下げる理由にはなりにくい部分です。塗り替えの費用は、売値に戻ってきません。
建物は下がる、土地は残る。築20年前後の評価のしくみ
木造の建物は、法定耐用年数22年を目安に評価が下がっていきます(出典: 国税庁)。築20年前後は、この目安に近づく時期です。ただし中央値の下がり方を見ると、急激ではありません。
緑区の戸建ては、築10年以内の中央値4,300万円(481件)に対し、築11〜20年は3,800万円(141件)。中川区は築10年以内3,500万円(580件)に対し、築11〜20年は3,000万円(92件)。どちらも下落は1割台にとどまっています。
下げ幅が小さいのは、値段の多くを土地が支えているためです。土地1平方メートルあたりの単価は、千種区で34万円(229件)、中川区で16万円(326件)と、区によって2倍以上の差があります。区ごとの戸建て価格の違いは、建物より土地の価格差を反映していると考えられます。
建築士の視点
築20年前後の家で最初に確認するのは、新耐震基準(1981年6月以降)を満たしているかどうかです。この年代ならほとんどの家が満たしていますが、念のため確認します。次に見るのは、屋根・外壁の防水がどこまで持っているか、給排水管に交換歴があるかです。ここが健全なら、内装や設備が古くても、土地の価値はそのまま評価に乗ります。逆に、雨漏りや水回りの劣化を放置していると、築年数以上に評価が下がることがあります。
建物と土地では、価格の下がり方が違う。建物は年数とともに評価が下がっていくが、土地は残る。築年数が古い家の価格は、土地の値段に近づいていく。図は考え方を示したもので、実際の下がり方は建物の造りや手入れの状況で変わる。
引き渡した後に不具合が見つかったとき、誰が直すのか
売った後で雨漏りやシロアリが見つかると、売主が責任を負うことがあります。契約不適合責任といいます。引き渡した家が契約の内容と違っていた場合、買主は修補や代金の減額を求められます。
築20年前後は、屋根の防水や給排水管が寿命に近づく時期です。売る時点で気づいていなくても、引き渡し後に出てくることがあります。
これを軽くする方法は、隠さないことです。契約の前に、物件状況報告書(告知書)と設備表を書きます。雨漏りの跡、過去の漏水、シロアリ駆除の履歴、給湯器やエアコンの不調。
知っていることはそのまま書きます。書いて伝えた不具合は、買主が承知のうえで買ったことになります。逆に、知っていながら書かなかった場合、後から責任を問われやすくなります。
書き漏らしやすいのが、直した履歴のほうです。屋根を塗り替えた、給湯器を替えた、外壁をやり直した。こうした記録は、建物の状態を説明する材料になります。
工事の書類や領収書が手元にあれば、査定のときに出します。前の章で見たとおり、築20年前後の値段は土地が多くを支えています。それでも建物の手入れが説明できるかどうかで、買主の安心感は変わります。
責任を負う期間や範囲は、売買契約書の中で決めます。個人が売主の場合、期間を区切る取り決めをすることがあります。
ここは仲介会社と相談して決める部分です。契約を結ぶ前に、自分の契約書がどうなっているかを必ず読みます。
売却で用意する書類は不動産売却の必要書類に、契約から引き渡しまでの流れは家を売る流れは7ステップにまとめています。
住宅ローンが残っている家は、そのまま売れるのか
築11〜20年は、2026年時点でおおむね2006年〜2015年に建てられた家です。まだ返済の途中という人も珍しくありません。
ローンが残っていても、家は売れます。ただし条件があります。引き渡しの日までに残りを完済し、抵当権を外すことです。
抵当権が付いたままの家は、買主が住宅ローンを組めません。だから、売却代金でローンを返して抵当権を抹消する。これを引き渡しと同じ日にまとめて行うのが普通のやり方です。
順番はこうなります。まず、いまの残高を確かめます。金融機関から届く返済予定表か、ネットバンキングの画面で見られます。
次に、売却価格の見込みを出します。そこから仲介手数料や登記費用などを引いた手取りを計算します。その手取りと残高を並べて比べます。
手取りが残高を上回れば、差額が手元に残ります。住み替えの頭金に回せます。下回る場合は、不足分を自分の資金で埋めて完済することになります。
埋められないなら、そのままでは引き渡せません。この段階で借入先の金融機関に相談します。返済そのものが苦しくなっている場合は、住宅ローンの返済が苦しいとき、家を売る前に知っておくことに整理しています。
ここで効いてくるのが、前の章で見た区ごとの差です。同じ「築11〜20年」でも、区が変われば値段の水準が変わります。残高と比べる相手は、一般論の相場ではなく自分の区の実際の価格です。
先に売って残高を清算するか、先に次の家を決めるか。順番の考え方は住み替えは売り先行か買い先行かにまとめています。
表の中央値を、自分の家に当てはめるとき
前の表の中央値は、その区で売れた家を値段順に並べた真ん中の1件です。平均でもなければ、上限でもありません。
同じ区の同じ築年帯でも、実際の取引は中央値の上にも下にも散らばっています。千種区の5,600万円を見て「うちも5,600万円」と考えると、ずれます。
散らばりを生む主な要因は土地です。前の章のとおり、築20年前後の値段は土地が多くを支えています。同じ区でも、土地が広いか狭いか、駅からどれくらいか、前面道路の幅はどうか。
ここが違えば中央値から離れます。土地の条件で価格がどう動くかは、間口と前面道路で売却価格はどれだけ変わるかにデータで出しています。
件数も一緒に見ます。表には件数を並べてあります。千種区の戸建ては53件、マンションは409件。
件数が少ないほど、たまたま高い1件や安い1件が中央値を動かします。件数の少ない区の数字は、点ではなく幅として見ます。「だいたいこのあたり」以上のことは、この表からは読み取れません。
では中央値は何に使うか。査定額を受け取ったときに、比べる相手として使います。区の水準から大きく外れた査定が出たら、その根拠を聞きます。
どの成約事例と比べたのか。土地と建物をそれぞれいくらで見たのか。
ここを説明できる会社かどうかで、その後の進み方が変わります。査定額がそのまま売れる値段にならない理由は、査定額と売却額は違うにまとめています。
マンションの築20年は、部屋の中より建物全体を見られる
前の表には、戸建てと並べてマンションの中央値も入れました。同じ「築11〜20年」でも、マンションは値段のつき方が戸建てと違います。戸建ては土地が値段の多くを支えます。
マンションの土地は、住戸ごとの持分です。そのぶん、建物全体をどう管理してきたかが評価に効いてきます。
買主や不動産会社が先に見るのは、部屋の中ではありません。管理費と修繕積立金がいくらか。積立金が今いくら貯まっているか。
値上げの予定があるか。大規模修繕をいつ、どこまでやったか。
滞納している住戸があるか。ここは自分の部屋をきれいにしても変えられません。
これらの情報は、管理組合と管理会社が持っています。売主が用意するのは、その資料です。管理会社に頼んで出してもらう書類(重要事項調査報告書などと呼ばれます)に、費用や修繕の履歴がまとまっています。
手配に日数がかかることがあるので、売ると決めたら早めに動きます。総会の議事録や修繕計画の書類が手元にあれば、それも一緒に出します。
築20年前後だと、大規模修繕を済ませた建物と、これからの建物が混じります。済ませているなら、その事実が買主の安心につながります。
これからなら、いつごろ予定されているかを聞かれます。どちらでも、聞かれて答えられる状態にしておくことです。
自分の部屋については、戸建てと同じ考え方です。売る前に全面リフォームをするより、給湯器や水回りの不調をそのまま伝えるほうが、後で揉めません。マンション特有の準備と進め方は中古マンションを売るに、査定で何を見られるかは不動産査定の仕組みにまとめています。
土地の広さと境界を、売る前に確かめる
前の章で見たとおり、築20年前後の値段は土地が多くを支えています。その土地が、どこからどこまでなのか。ここが曖昧なまま話を進めると、引き渡しの直前で止まります。
先に見るのは3つです。登記簿に載っている面積。測量図が手元にあるか。
敷地の角に境界標が入っているか。境界標はコンクリートの杭や金属のプレートで、地面に埋まっています。植木や物置の陰に隠れていることもあるので、実際に歩いて探します。
測量図が見当たらず、境界標も見つからない。このときは、確定測量が必要になることがあります。隣の土地の所有者に立ち会ってもらい、境界を確認して署名をもらう手続きです。
人が集まるまでに日数がかかります。隣が相続で代替わりしていると、連絡先を調べるところから始まります。売ると決めた時点で仲介会社に相談し、自分の土地で必要かどうかを聞いておきます。
もう一つが越境です。ブロック塀が隣にはみ出している。樹木の枝が越えている。
雨樋や給排水管が隣の土地を通っている。建てたときのままになっていることがあります。越境が見つかったら、放置せず契約の前に整理します。
すぐ撤去する以外に、将来の建て替えのときに直すと決めて覚書を交わす形もあります。どう扱うかは仲介会社と相談して決めます。
土地まわりの準備は後回しにされがちです。ただ値段の根拠が土地にある以上、面積と範囲がはっきりしているかどうかは、査定にも交渉にも効いてきます。
境界確定と土地の売り方は土地を売る。境界確定と「古家付きか更地か」に、査定で出す資料は土地の査定で必要な資料と、評価のされ方にまとめています。
直さず売るか、状態次第で買取か
築20年前後の家でまず避けたいのは、売る前に全面リフォームを決めてしまうことです。買主は自分の好みで直したい人が多く、先に手を入れても、その費用がそのまま値段に乗るとは限りません。
| 売り方 | 向いているケース | 気をつける点 |
|---|
| 直さずそのまま売る | 傷みが浅い/早く進めたい | まず今の状態で査定を取ってから判断する |
| 部分補修して売る | 雨漏り・水回りなど内見の印象を落とす不具合がある | 直すのは危険と雨漏りの止血にしぼる |
| 買取(状態次第) | 傷みが深い/再建築不可などで仲介が難しい | 価格は仲介より下がりやすいが、現況のまま相談できる |
「築20年前後だから安く見られる」と決めてかかる前に、状態を先に確かめます。自分の家がどの列に近いか、売る前にセルフチェックで確かめられます。売れる家かどうかのセルフチェック。
傷みが深く、通常の仲介では売りにくい「訳あり物件」も、買取という手もあります。種類別の考え方は、[訳あり・難あり物件を売る。
買取という選択肢と、種類別の売り方](/guide/chikofu/wakeari-bukken-baikyaku-kaitori/)に整理しています。築30年以降の建物評価と、直す・直さない・解体の判断は、名古屋市で築30年の家を売る記事で詳しく見ています。