空き家を、壊すか貸すか売るか
台東区(東京都)の空き家|除却助成は上限50万円。谷中は令和8年4月から300万円
編集部
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結論から 台東区の老朽建築物等の除却工事費用の助成は、除却工事費の3分の1以内・上限50万円です。対象は昭和56年5月31日以前に建てられ、耐震診断で「倒壊の危険性が高い」と判定された住宅です。ただし要綱には、不動産販売または不動産貸付の業務のために除却する工事は対象外と明記されています。売るために壊す場合がこれに当たるかどうかは公開情報からは判断できないため、契約の前に建築課(03-5246-1335)へ確認してください。谷中二・三・五丁目の不燃化特区では、令和8年4月から老朽建築物除却助成の上限が300万円に拡充されました(2026年8月時点)。
東京都台東区で空き家を持っているなら、金額より先に確かめることがあります。区の助成の要綱に、見落としやすい一行が入っているからです。
その一行はこうです。「不動産販売または不動産貸付」の業務のために除却する工事は対象外。売ってしまう前に壊しておこう、と考えている人には当てはまります。
この記事は台東区の制度と、台東区の実成約データだけで書きます。制度の内容は2026年8月時点のものです。
台東区の除却助成は上限50万円。「売るため」の解体は対象外と書いてある
区内全域で使えるのは、老朽建築物等の除却工事費用の助成です。補助は除却工事費の3分の1以内で、上限は50万円になります。
対象は昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅です。そのうえで、耐震診断で「倒壊の危険性が高い」と判定されている必要があります。
入口は解体の見積もりではありません。耐震診断です。診断を受けていない家は、そこから始まります。
そして冒頭の一行に戻ります。要綱には、不動産販売または不動産貸付の業務のために除却する工事は対象外と明記されています。
相続した家を売るために壊す場合、この規定がどう当てはまるのか。公開情報からは判断できませんでした。判断するのは区です。
窓口は建築課(03-5246-1335)です。「売却を考えているが対象になるか」と、そのまま聞いてください。ここを曖昧にしたまま工事に入るのが、いちばん危ない進み方です。
令和8年度の受付期間と予算枠も、公開情報からは確認できませんでした。年度の途中で受付が終わる制度もあります。
事前申請が先。判を押す前に、電話を1本入れる
補助金には、申請と工事の順番という落とし穴があります。交付決定より前に契約や着工をすると、あとから対象外になる制度が少なくありません。
台東区の場合、次の節で触れる不燃化特区の助成は「工事着手の約1か月前までに事前申請」と決まっています。除却工事費用の助成については、申請と契約の前後関係を確認できませんでした。
だから順番はこうです。見積もりを取る。
契約はまだしない。区に電話する。
見積もりを取る行為そのものは、ふつう制限されません。危ないのは、業者と話し込むうちに、その場で契約書に署名してしまう場面です。
見積もりは複数社から取ってください。解体の費用は建物の構造で変わります。現場まで重機が入る道があるかどうかでも、金額と工期は動きます。
台東区の成約データでは、前面道路の幅で戸建ての中央値に差が出ています。集計の区分は4m未満、4〜6m、6m以上の3つです。道の広さは、解体の段取りと売却の条件の両方に影響してきます。
費用の決まり方と業者の選び方は空き家・古家の解体費用は何で決まる?にまとめました。
庭木と雑草は、放っておくと近隣からの苦情になります。空き家の管理で、いちばん先に問題になる場所です。
谷中の二・三・五丁目は、令和8年4月から上限300万円
台東区には不燃化特区があります。対象は谷中二丁目・三丁目・五丁目の地区です。
この地区の老朽建築物除却助成は、令和8年4月から上限が300万円に拡充されました。令和8年4月1日以降の承認申請から、新しい上限額が適用されます。
補助率は公開情報からは確認できませんでした。上限だけが分かっている状態です。地域整備第三課(03-5246-1365)で確かめてください。
対象になる建物の目安は、耐用年限の3分の2を経過していることです。木造15年、鉄骨造23年、鉄筋コンクリート造32年が目安として示されています。
木造15年という線は、相続した実家ならたいてい越えています。旧耐震かどうかで決まる区内全域の助成とは、対象の決め方そのものが違います。
申請できるのは個人または中小企業者で、住民税の滞納がないことが条件です。ここにも「宅地建物取引業者が販売を目的とする場合を除く」という規定が入っています。戸建建替え助成と共同建替え助成にも、同じ文言があります。
申請は工事着手の約1か月前までに済ませます。年度をまたぐ工事を考えているなら、承認申請の日付が上限額を分けます。
自分の土地が地区に入っているかどうかは、地図を眺めても分かりません。住所を伝えて区に確認するのが早いです。
空き家バンクは無い。貸す枠は北部地区の「賑わい」に限られる
台東区に空き家バンクはありません。区の空き家対策のページに載っているのは、案内とお知らせです。
条例、空家法の改正、相続登記の義務化、総合相談窓口、実態調査、被相続人居住用家屋等確認書の交付。並んでいるのはこれだけでした。
登録して借り手を待つ、という区の仕組みは見当たりませんでした。住宅として貸すなら、民間で探すことになります。
ひとつだけ、区が用意している枠があります。空き家・空き店舗リノベーション準備助成金です。
補助は2分の1で、上限は50万円。対象は日本堤1・2丁目、清川1・2丁目、東浅草2丁目、橋場1・2丁目に限られます。北部地区だけの制度です。
ただし、これは売却を支援する制度ではありません。目的は賑わいの創出です。1階または2階を貸し出すことが条件で、住宅・駐車場・倉庫など賑わいの創出に即しない用途は認められません。
物販や飲食店などのテナントが入ったあと、その入居のPRに同意することも求められます。つまり、相続した家をそのまま住宅として貸す話には合いません。
令和8年度の受付は4月1日から12月25日までです。工事の完了と支払いは、令和9年2月26日までに済ませる必要があります。窓口は地域整備第二課(03-5246-1366)です。
売るか貸すかで迷っているなら、家を売るか貸すか。判断の分かれ目も見てください。
台東区の実成約。主役はマンションで、戸建ては築46年でも粘る
台東区で取引がいちばん多いのは中古マンションです。次が戸建てで、いちばん少ないのが土地でした。
ここが判断の分かれ目になります。分譲マンションの一室は区分所有です。ここまで書いた解体の助成は、どれも関係しません。
マンションの築年の落ち方には段差があります。いちばん大きく落ちるのは、築21〜30年から築31〜45年に移るところでした。
築46年以上の中央値は、築10年以内の半分以下です。相場が上がっている局面でも、建物は毎年その段差に近づきます。
直近1年の中古マンションの中央値は、その前の1年に比べてやや上がりました。間取りは2LDKがいちばん多く、次が1LDKです。
改装済みのマンションは、未改装より中央値が高く出ています。ただし、かけた改装費をそのまま価格に乗せられるとは限りません。現況のままの価格と、直した場合の価格を両方聞いてから決めてください。
マンションの成約が多い地区は、多い順に浅草、台東、東上野、根岸、千束でした。
戸建ての動きは違います。築46年以上の中央値は、築10年以内と比べてもあまり下がっていません。
いちばん大きく落ちるのは、築10年以内から築11〜20年に移るところです。そこを過ぎたあとは、築年よりも土地の条件が影響してきます。
用途地域にも偏りがあります。戸建ての中央値がいちばん高いのは商業地域で、いちばん低いのは近隣商業地域でした。取引がいちばん多い用途地域も商業地域です。
地区の差もはっきり出ています。戸建ての成約が多いのは、多い順に浅草、根岸、浅草橋、東上野、台東です。中央値が高いのは上野、低いのは鳥越でした。
土地の1平方メートルあたりの単価は、台東が高く、日本堤が低く出ています。リノベーション準備助成金の対象地区は、単価が低いほうに重なります。
台東区全体では、戸建ての成約価格の中央値は13,000万円です。成約は432件で、真ん中の半分は6,900万円〜31,000万円に入ります。
土地は1平方メートルあたりの中央値が150万円、成約は165件です。
直近1年の戸建ての中央値は、その前の1年に比べてはっきり下がっています。マンションはやや上がりました。同じ区の中で、向きが分かれています。
売る・貸す・壊す・持ち続ける。台東区の材料で並べる
迷っているなら、この順で確かめてください。
まず名義。 登記事項証明書で、名義と権利関係を確認します。共有になっていれば、売るのも壊すのも全員の合意が要ります。
次に現況のままの査定。 台東区はマンションと戸建ての取引に厚みがあります。比べられる事例があるということです。手を加える前の値段を、先に知ってください。相続した空き家なら、譲渡所得から3,000万円を引ける特例が使えることがあります。要件は細かいので相続した空き家を売る。譲渡所得から3,000万円を引ける制度で確認してください。
貸すなら、用途を先に確かめる。 区の助成が用意されているのは、北部地区で1階または2階を店舗などに貸す場合だけです。住宅として貸すつもりなら、区の枠は当てになりません。
壊すのは、いちばん後。 台東区は土地の取引がいちばん少ない区分です。更地にしたあとの出口は、マンションや戸建てほど厚くありません。更地に戻すとやり直しがきかず、住宅用地の特例が外れて土地の税負担が変わることもあります。古家付きのまま売る道と比べてから決めてください。材料は更地で売るか、古家付き土地のまま売るかにあります。
そのうえで、順番にもう一度気をつけてください。「売るために壊す」と受け取られると、除却工事費用の助成は対象外の規定に当たる可能性があります。壊してから聞いても間に合いません。
持ち続けるなら、費用が出続ける前提で。 管理の手間と固定資産税は毎年かかります。傷みが進めば、区の実態調査や条例にもとづく対応の対象に近づきます。
売ると決めたあとの段取りは家を売る流れは7ステップで確認できます。
この記事の制度の内容は、2026年8月時点の台東区の公開情報にもとづきます。不燃化特区の補助率、除却工事費用の助成の令和8年度の受付期間と予算枠は確認できませんでした。動き出す前に、次の窓口で最新の内容を確かめてください。
- 老朽建築物等の除却工事費用の助成: 建築課 03-5246-1335
- 不燃化特区(谷中地区): 地域整備第三課 03-5246-1365
- 空き家・空き店舗リノベーション準備助成金: 地域整備第二課 03-5246-1366
- 区の代表電話: 03-5246-1111