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相続した家。兄弟と、名義と、売る順番

相続放棄した家はどうなる? 管理義務と国庫帰属、売れない理由【建築士監修】

結論から

相続放棄をした家は、放棄した人のものにはならず、売ることもできません。ただし、放棄した時点でその家に住んでいた・管理していた人には、次の管理者に引き渡すまで家を保存する義務が残ります(民法940条)。相続人全員が放棄すると、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が家を管理・清算し、最終的に残った財産は国庫に帰属します(民法959条)。名義や税金にかかわる個別の判断は、司法書士・弁護士に確認してください。

相続放棄をした家は、放棄した人のものにはならず、売ることもできません。ただし、放棄した時点でその家に住んでいた・管理していた人には、保存する義務が残ります(民法940条)。次の管理者に引き渡すまで、家を保存しなければなりません。

相続人全員が放棄すると、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が家を管理・清算します。最終的に残った財産は国庫に帰属します(民法959条)。名義や税金にかかわる個別の判断は、司法書士・弁護士に確認してください。

相続放棄をすると、家の所有権はどうなるか

相続放棄は、家だけでなく預貯金や借金を含む遺産全体を手放す手続きです。放棄した人は民法939条により「初めから相続人でなかった」ものとみなされ、家の所有権も一切持ちません。放棄しても家という物自体が消えるわけではなく、所有権は次の順位の相続人に移ります。

たとえば、亡くなった人の子が全員相続放棄をすると、相続権は父母などの直系の親に移ります。父母もいない、あるいは父母も放棄すれば、次は兄弟姉妹に移ります。

自分が放棄すれば話が終わるわけではなく、次の順位の人が同じ家を引き継ぐ立場になる点は見落としやすいところです。次の順位にあたる人には、放棄する前に伝えておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。

放棄した家に住んでいた・管理していた人に残る「保存義務」

2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法940条により、相続放棄した人の義務は「保存義務」に変わりました。対象は、放棄した時点でその家を現に占有していた人だけです。相続人または家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人に家を引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で家を保存しなければなりません。

改正前は、放棄の時点で占有していたかどうかにかかわらず、放棄した人全員に「管理を継続する義務」がありました。実家を離れて暮らし、家にまったく関わっていなかった人にも義務が及んでいたため、負担が大きいという指摘がありました。

改正後は、放棄の時点で実際に家に住んでいた人、または鍵を管理していた人など「現に占有していた」人に限定されています。住んでいたかが鍵です。

遠方に住み、家に一度も関わっていない相続人であれば、放棄後の保存義務を負わないケースが多いです。個別の状況は司法書士・弁護士に確認してください。

誰も住まなくなった和室に段ボールが積まれている
住む人がいなくなった家は、片付けから始まります。家財の量は、査定より先に見ておくと段取りが読めます。

相続放棄した家は売却できない

理由は単純です。相続放棄をした家は、放棄した人の所有物ではないため売却できません。売却は所有権を移す行為であり、放棄した人にはその権利がないためです。

さらに注意点があります。相続放棄の前に家を売却・解体するといった「処分」行為は、法定単純承認とみなされます(民法921条1号)。以後は、相続放棄そのものができなくなります。

保存義務の範囲でできるのは、雨漏りの応急処置や生ものの処分といった「保存行為」までです。壊れかけた雨どいを直す、傷んだ食品を片付けるといった対応は保存行為にあたり、単純承認とはみなされません。

一方で、家財の売却や家屋の解体、リフォームのような現状を変える行為は「処分行為」とみなされる可能性があります。相続放棄を検討している段階、あるいは放棄した後で対応に迷う場合は、動く前に司法書士・弁護士に確認したほうが安全です。

相続人全員が放棄したらどうなるか(相続財産清算人と国庫帰属)

法定相続人の全員が相続放棄をすると、家の所有者が誰もいない「相続財産法人」という状態になります(民法951条)。利害関係人または検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選びます(民法952条)。

清算人が家の管理・売却・債務の清算を進めます。動くのは清算人です。

相続財産清算人の選任を申し立てるには、家庭裁判所に予納金を納める必要があり、金額はケースによって異なります。清算人は官報公告などの手続きを経て相続人がいないことを確定させ、家や土地を含む財産を換価・清算します。

特別なゆかりがあった人(特別縁故者)は、家庭裁判所に申立てをすることができます。申立てが認められれば、清算後の財産の全部または一部がその人に分与されます(民法958条の2)。

それでも残った財産は、最終的に国庫に帰属します(民法959条)。放棄した人が保存義務から解放されるのは、この相続財産清算人に家を引き渡した時点です。

家を手放す方向で話を進める場合は、相続した実家を売る、進め方で一般的な流れと実際の成約価格を確認できます。

相続放棄した家の固定資産税は、誰が払うのか

原則はこうです。相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。

相続を理由に固定資産税を負担する立場にはなりません。放棄したあとに納税通知書が届いても、そのまま払う義務はない、というのが原則です。

ただ、実務では通知が届くことがあります。固定資産税は、市町村が持っている課税台帳の情報をもとに送られるためです。

登記の名義が亡くなった人のままで、市町村が放棄の事実を把握していない場合があります。その場合、次の順位で相続する立場の人に通知が回ることもあります。

届いたら放置せず、市町村の資産税担当の窓口に連絡し、相続放棄をしたことを伝えてください。家庭裁判所が出す相続放棄の受理を証明する書類の提出を求められる場合があります。名義が亡くなった人のままになっている家の登記の扱いは相続登記の義務化と期限にまとめています。

その後の税金は、相続財産清算人が選ばれれば、清算人が相続財産の中から扱います。清算人がまだいない期間の扱いは市町村によって運用が違うため、窓口で確認するのが確実です。

気をつけたいのは、亡くなった人の預貯金から税金を払ってしまうことです。遺産に手をつけた(処分行為)とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄を検討している段階で納税通知書が届いたときは、払う前に司法書士・弁護士に確認してください。

相続放棄をしたあと、その家に住み続けられるか

同居していた親が亡くなり、そのまま実家に住んでいる。この状態で相続放棄をすると住み続けられるのかは、迷いやすいところです。

結論から言うと、住み続ける権利はありません。相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされ、家の所有権を持たないためです。

保存義務があることと、住んでいいことは別です。民法940条の保存義務は、次の管理者に引き渡すまで家を傷ませないための義務です。住むための権利ではありません。

放棄したあとも住み続けていると、次の順位の相続人や相続財産清算人から明け渡しを求められます。いつ出るかは相手との話し合いになりますが、断られれば住み続けることはできません。

住み続けたい気持ちが強いなら、放棄を決める前に他の道と比べてください。借金より家や預貯金のほうが多いなら、相続して住み続ける、いったん相続してから売る、といった選択肢が残ります。相続放棄は家庭裁判所に受理されると、原則として撤回できません。

後戻りはできません。何がどれだけ残っているのかを確かめないまま放棄すると、後戻りできない形になります。遺産の全体像と自分の希望は、決める前に司法書士・弁護士に整理してもらってください。

放棄せずに相続した場合の選び方は相続した実家、貸すか売るかにまとめています。売る方向で進めるときの流れは相続した家を売るガイドにまとめています。

家の中の家財や遺品は、相続放棄したらどうなるか

家財や遺品も、家と同じ相続財産です。相続放棄をすれば、家具も家電も、放棄した人のものにはなりません。親族から片付けを頼まれても、自分の判断で物を処分してよい立場ではなくなります。

やっかいなのは、片付けと処分行為の線引きです。傷んだ食品や明らかなゴミを捨てるのは、保存行為の範囲とされます。一方、まだ使える家電を売る、貴金属を持ち帰る、家族で形見分けをする。

こうした行為は、遺産を受け取る意思があったとみなされるおそれがあります(法定単純承認・民法921条1号)。放棄する前でも、放棄した後でも同じです。

財産としての価値があると見られる物ほど、処分行為と判断されやすくなります。写真やアルバムのように、価値の見方が分かれる物もあります。

見落としやすいのが、片付けを業者へ一括で頼むケースです。作業の中で、価値のある物が買取に回ったり処分されたりします。

買取代金を受け取れば、遺産に手をつけたと見られる可能性が高くなります。相続放棄を考えている段階なら、業者に依頼する前に司法書士・弁護士に確認してください。確認が先です。

現実的に安全なのは、放棄するかどうかが決まるまで家の中を動かさないことです。鍵を管理している人は、現状のまま保っておきます。どんな物がどれだけあるのかを写真で記録しておくと、後の説明がしやすくなります。

保存義務は建物だけの話ではありません。次の管理者に引き渡すまで、中の物も含めて傷ませないように保つ義務です。相続財産清算人が選ばれたら、家財も含めて引き渡すことになります。

放棄せずに相続する場合の片付けの進め方は遺品整理はいつやる?にまとめています。

相続人の一部だけが放棄した家を、残った人が売るとき

きょうだいのうち1人だけが相続放棄をする。相続では珍しくない形です。この場合、放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。

家をどうするかは、残った相続人だけで話し合って決めます。放棄した人は遺産分割の話し合いに加わりません。合意書への署名も実印も要りません。

売るときにまず必要なのが、登記の名義を移すことです。亡くなった人の名義のままでは、家は売れません。名義を移す手続きでは、放棄があったことを示す書類の提出を求められます。

家庭裁判所が出す相続放棄の受理を証明する書類です。取り寄せに時間がかかることもあるため、売却の話を進める前に手配しておくと、あとで止まらずに済みます。登記そのものの期限は相続登記の義務化と期限にまとめています。

注意したいのは、同じ順位の相続人が全員放棄した場合です。相続権は次の順位の人に移り、その人たちが家の話し合いに入ります。

売る話を進めていても、相手が入れ替わって最初からやり直しになります。誰が放棄して誰が残るのかは、売却を動かす前にはっきりさせてください。

放棄した人が、売却代金の分け前を遺産として受け取ることはできません。相続人ではないためです。

どうしても渡したい事情があるなら、税金の扱いが変わります。動く前に司法書士・税理士に確認してください。

相続した家を売る流れ全体は相続した実家を売る、進め方にまとめています。

相続放棄しても、家が自動で国のものになるわけではない

「放棄すれば、あとは国が引き取ってくれる」と思っている人は多いです。実際はそうなりません。

国庫に帰属するのは、相続財産清算人が選ばれ、清算が終わって、それでも財産が残った場合です(民法959条)。放棄の手続きが終わった時点で、家の管理や名義が国に移るわけではありません。

そして、この清算人は自動では選ばれません。利害関係人か検察官が家庭裁判所に申し立てて、はじめて手続きが動きます(民法952条)。

申立ては義務ではありません。誰も申し立てなければ、清算人は選ばれず、国庫帰属の話も始まらないままです。

現実には、ここで止まる家があります。申立てには予納金がかかるためです。金額はケースによって違いますが、放棄した人から見れば、出ていくばかりのお金です。

次の順位の相続人も全員放棄していれば、費用を負担してまで動く人がいなくなります。家は亡くなった人の名義のまま、誰も所有者として動かない状態で残ります。

困るのは、放棄した時点でその家に住んでいた人、鍵を管理していた人です。保存義務は、相続人か相続財産清算人に引き渡すまで続きます(民法940条)。

清算人が選ばれない限り、引き渡す相手がいません。義務だけが終わらずに残ります。

関わりを完全に終わらせたいなら、自分が利害関係人として清算人の選任を申し立てる道があります。費用はかかりますが、引き渡した時点で義務は終わります。申し立てるかどうか、予納金がいくらになりそうかは、司法書士・弁護士に見積もってもらってください。

相続放棄するか、相続するか。決める前に並べて比べる

相続放棄は受理されると原則撤回できません。決める前に、この記事で触れた三つの道を同じ物差しで並べます。

選択肢家の所有権借金の扱い家に住み続けられるか決めたあとの後戻り
相続放棄する初めから相続人でなかった扱いで、持たない(民法939条)預貯金ごと遺産全体を手放すので、引き継がない住む権利はない。明け渡しを求められる受理後は原則撤回できない
相続して住み続ける相続人として持つ引き継ぐ住み続けられるあとから売る道も残る
いったん相続してから売る相続人として持ち、名義を移して売る引き継ぐ売ったあとは住めない—

借金より家や預貯金のほうが多いかどうかで決まります。放棄しても住んでいた人には保存義務が残るので、迷ったら司法書士・弁護士に整理してもらってください。

放棄した家を放置するとどうなるか

保存義務がある間に家を放置すると、老朽化が進みます。周辺に危険を及ぼす「特定空家等」や「管理不全空家等」に指定されることがあります(空家等対策の推進に関する特別措置法)。

指定されると、自治体からの指導・勧告の対象になります。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が増える場合があります。

空家法は本来、家の所有者や管理者を対象にした法律です。ただ、相続放棄をしても保存義務が残っている間は、事実上その家の管理を担う立場にあります。倒壊や部材の落下で近隣に損害を与えた場合、保存義務を怠っていたことが問われる可能性もあります。

終わらせる方法はあります。関わりを早く終わらせたい場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。

家を引き渡すところまで進めるのが本来の道筋です。空き家として放置した場合の税金・制度面の詳しい整理は空き家の記事一覧にまとめています。

建築士の視点

現場で見てきた実感として、人が住まなくなった家は、換気と通水が止まった時点から劣化のスピードが上がります。雨どいのゴミ詰まりや小さな雨漏りを放置すると、半年から1年で柱や土台が傷み、修繕の規模が一気に大きくなります。先延ばしは損です。

保存義務の範囲でも、月に一度は窓を開けて換気する、雨どいの詰まりを見る、といった手入れはできます。こうした手入れをしておくと、後で特定空家等に指定されるような深刻な状態を避けやすくなります。

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あわせて、資料「相続した家の売り方」(PDF・18ページ)も、このアドレスにお送りします。

よくある質問

相続放棄した家を勝手に片付けてもいいですか?

片付けの中身によります。生ものや傷んだ家財の処分、壊れかけた設備の応急的な修理など「保存行為」の範囲であれば、単純承認とはみなされません。一方で、価値のある家財の売却や家屋の解体は「処分行為」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。迷う場合は、着手する前に司法書士・弁護士に確認してください。

相続放棄と「相続土地国庫帰属制度」は同じ制度ですか?

別の制度です。相続放棄は、借金を含む遺産全体をまとめて手放す手続きで、費用はかかりません。相続土地国庫帰属制度は、いったん相続した土地のうち不要な土地だけを国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日に始まりました。審査手数料や10年分の管理費用相当額の負担金がかかります。目的も費用も異なるため、混同しないよう注意してください。

相続放棄した家の保存義務をなくすには、どうすればいいですか?

保存義務は、相続人または相続財産清算人に家を引き渡すまで続きます。他に相続人がいなければ、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、清算人に家を引き渡すことで義務を終えられます。申立てには予納金が必要になるため、費用や手続きの流れは司法書士・弁護士に確認するのが確実です。

本ページは参考情報です。個別の税額・評価額は税理士・自治体窓口にご確認ください。

参照した情報源

  1. e-Gov法令検索「民法」(第939条・第940条・第921条・第951条・第952条・第958条の2・第959条)・確認日 2026-07-12
  2. 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」(相続法改正パンフレット)・確認日 2026-07-12
  3. 法務省 法制審議会 民法・不動産登記法部会資料29「財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)」・確認日 2026-07-12
  4. 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」・確認日 2026-07-12
  5. 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」・確認日 2026-07-12

本記事は下書きにAIを活用し、出典との照合・建築士監修を経て公開しています。

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